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2020-02

ビコスの朝。

ビコス

25年前の2月から3月、大学卒業の直前、僕は40日間かけてヨーロッパを歩いた。ロンドンを皮切りにアムステルダム、パリをめぐった旅の序盤戦、奇妙な体験をした。

日曜日の朝。エッフェル塔にほど近い道ばた。高級車から降り立った背広の紳士がイタリアなまりの英語で僕と相棒に話しかけて来た。

「自分は今、シャネルのファッションショーに出展して、ミラノに帰る途中である」と車の後部トランクを開けてみせる。そこには、ビニール袋に包まれた、いかにも高価そうな新品とおぼしき革のコートやブルゾンが詰まっていた。

「私はご覧の通りリッチマンである。だが今日は銀行がどこも休みだ。不幸にも現金の持ち合わせがなく、トラベラーズチェックも換金できない。だから、ガソリンを入れることも、食事をすることも出来ない。むろん、この私がただお金を恵んでくれとか貸してくれとは言わない。ここにある素晴らしいデザイン、最高の革製品を格安で買ってはくれまいか?」

よく晴れた日曜の朝。そびえるエッフェル塔。巴里のイタリア人。なんというシチュエーションだ。半分眉につばをつけながらも、これから続く旅に於いても、こうした場面からすべて逃げ出していては、危ない目にも遭わないかもしれぬが、激しい感動やきわどい体験にも出逢えないのではないか? 仮にこれが詐欺まがいだったとしても「現物」は手元に残るではないか。しかもこの品々は、素人目にもいかにも so expensive!

結局、僕らは同じ革でしつらえた、「シャネルのショーにも出品した」コートとブルゾンを彼から「購入」した。ブランド名は Vicos! 金額はよく覚えてはいないが、凄まれたり値切ったりの応酬の挙げ句に、日本円で2万円程度だったろうか。

背広の紳士は「こいつをまともに購入したら $5,000 はくだらない。君たちはなんてラッキーガイなんだ!」と、自分はまったく大損だと言わんばかりに真顔で言った。

ビコス氏と別れた後、僕と相棒はエッフェル塔をバックに「戦利品」を着て記念撮影した。その先の旅を身軽に過ごすために、郵便局から安い see mail で日本に送った。

帰国後、横濱の税関から電話が来た。
貴殿が巴里から送った衣類に、高額な関税がかかる可能性があるので、横浜港で止まっている、と。残りの旅に熱中して忘れかけていたビコスが、ふたたび僕に衝撃をもたらした。

ずいぶん壮大な時間を経て、ようやくビコスを手にした僕は、知り合いの洋服屋に「鑑定」を依頼した。税関が目を留めるくらいだ、相当な逸品に違いない。ところが洋服屋は、わがビコスにほんの少し目を向けただけで、ちょっと申し訳なさそうな、すこし咎めるような口調で言った。

「ホシノさん。これに幾ら払ったの? 5,000円でも高過ぎる。正直これ革じゃないどころか、合成皮革ですらない。ほれ」

彼はコートの裏から小さく生地を採取して、100円ライターの火を近づけた。生地はチリチリと丸まりながら、手品を見ているような塩梅で溶けるように消失した。よくよく見れば、縫製はゆがみ、ダブルの合わせが笑っちゃうくらいにずれていたりとお粗末な部分が分かって来た。でも、すくなくとも洋服のカタチをしていて、着ることはできる物体なのだ。

なんと手の込んだことを、ビコス ! !

結局、高額な関税を支払うことはなかった…。


その旅から四半世紀。
横濱から小樽に移り住んで16年。
垢のように溜まり始めたがらくたを処分していて、久々にビコスとご対面した。相棒は、僕のそんな鑑定を知らずに、父上の誕生日に Vicos をプレゼントしていたらしい。

巴里のイタリア人、今いづこ…。



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風の内モンゴル紀行、本日より3週連続オンエア。


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ああああ、すいません。
何ということでしょう、
二ヶ月半もの間、日記をさぼってしましました。
しかも前回の7月17日付けは、私の三年越しの内モンゴル企画実現に向けた、最後の下見に草原を訪れた際ののものでした。

そして本日、
9月1日から8日の日程で行われた、風の色、内モンゴル紀行『草原の人になる』の本番が番組化され、オンエアされる運びとなりました。

10月4、11、18日の各木曜日、全3回、
uhb 北海道文化放送
『エキ☆スタ発』(15:00~16:00)にて、
毎回20分弱のVTRによる特集、
『変わりゆく内モンゴル』としてオンエアされます。
ホシノも毎回スタジオに生出演で司会の方とからみます。

写真は9月21日から行われたuhb編集室での編集の模様。
水先案内人兼通訳のトブシンバト君(左)とディレクターの今野さん。番組内にモンゴル語の会話も多数登場するため、全体のチェックのみならず、翻訳と字幕やスーパーの監修をするため、バト君は東京からやって来ました。
かくいう私も映像の編集から、MA(ナレーションや吹き替えなどの音声を入れる作業)まで、日常業務を放り出して? 立ち会ったのでした。

北海道の皆様、お仕事の方は番組を録画予約して、どうぞご覧くださいませ。


●尚、同じ旅の模様を、

10月5日発売の札幌の大人の情報誌『オトン』にも2ページ、スペースをいただいてホシノが書いております。

こちらも、ぜひ! 書店にてお買い求めくださいますよう。
ただし、今号の巻頭そば特集は、諸般の事情により、残念ながらホシノは執筆いたしておりません。

内モンゴル24時。

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40日もさぼって、謝りながら再開するに至っては、日記ってだれのために、だれに向かって書いてるのさ、と言いたくなってしまいます。とりあえず、ゴメンナサイ。

で、とりあえず私、内モンゴルに出張に来て7泊目になる訳です。

明朝、ここ首府フフホトを発って、北京に飛び、もう1泊。18日の21時に成田に降り立ちます。すでにフフホト、いえ、すでにヘトヘト。なんせ、7日間、正確には、到着日10日は、空港に降り立ったのが日付も変わりそうな時間でしたから、11日から16日までの6日間、ということになりますが、内モンゴル内での走破距離は3,485km。9月に実施される旅の本番に向けて、北海道内のどんな過酷なロケでも、まったく経験したことのない、恐るべき移動に注ぐ移動を経験しました。

われわれの旅の水先案内人は、昨日31歳の誕生日を迎えたバト君。その伯父さんで、旅行社経営のバトさんに運転をお願いしつつ、なぜかその娘さんや、バト君のお兄さんのバトさんや、そのお嫁さん、妹さん、そしてご両親、地方からも伯父さんが数名、その息子とか、どなたかの親友ご夫婦とか、その友だちとか、そうした、名前も覚えきれないたくさんの登場人物が入れ替わり立ち替わりでボリューム満天、いつもにも増す、てんこ盛りの内モンゴルでありました。

関係各位、草原の家族は素敵でしたよ。
都合四つも泊まり比べて、フフホトのホテルもようやく決定しました。
昨年建国800周年を迎えたモンゴル帝国を率いたチンギスハン陵にも素晴らしい宿泊施設を紹介されました。今回はじめて、ラッパのように音を奏でるという、鳴き砂の砂漠にも足を運びましたよ。

後半の1,800 km では、その行程のトイレ休憩ポイントのすべてをABCランクに分けてチェックし尽しました。

その間にも内モンゴルテレビ局との打ち合わせをこなしつつ、今件で大変お世話になる北海道文化放送のプロデューサー、関係の航空会社さん、まったく別件である同じく9月実施のディナーショーの提案でホテルの方や、東京の噺家さん、等々との通信で、とにかく、今回初めて起用した海外仕様の携帯電話もフル稼働、料金が恐ろしいのであります。

写真はついさきほど、最後の晩ゆえ、すぐ近くにある内モンゴル最大の広場に、なんとなくふらふらと足を運んで内モンゴル人に於ける広場の存在を考察したり、でも実は意味もなく屋台で串焼きとぬるいビールと串焼きをたしなんでいた時の広場の様子であり…。

小樽雪あかりの路1

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第八回を迎えた「小樽雪あかりの路」。
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雪にうずもれた街に、
ひっそりともされた灯りを、
その灯りが浮かび上がらせた路を、
ただただ歩いてめぐるのです。
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ときどき出現する「ゆげのおもてなし」に、
ほっと、ため息をついてぬくもり、
ふたたび歩き続けます。
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このイベントは、
町並みそのものがお楽しみの核心です。

第八回 小樽雪あかりの路は、
本日最終日。

まだ、間に合います。

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お江戸の芸と永さんと(前編)。

ブームと言われているからだけではなく、最近落語が気になっている。
北海道に惚れ込んで移り住んだものの、ときどき無性に江戸的なるものが恋しくなる自分としては、蕎麦なんかと同等の、文化への慕情みたいなものかもしれない。北海道でも頑張って落語を紹介しようとする動きがあるようだが、いかんせん集客もきびしいらしい。

この3月頃、僕も自分なりに北海道に落語を持ってくるようなことができないかと考えていた。
そして思い当たった。
「俺、噺家さん知ってるじゃないか!」
東京時代に仕事で何度かご一緒していた古今亭八朝師匠だ。

八朝さんは、名人として名高い5代目古今亭志ん生(享年83)の二男・古今亭志ん朝師匠(2001年10月1日没。享年63歳)のお弟子さん。その優れた企画力から、古今亭一門の頭脳と呼ばれている。

思い立ったら何とやら、最後にお逢いしたのはかれこれ15年くらい前なので、現在の連絡先が分からない。で、落語協会にメールをしてみたら、数日後に協会からメール、その数日後にご本人から電話がかかった。

「なんだよ、どこかいなくなっちゃったと思ってたら、北海道にいたの? え、当たり前だよ、覚えてるよ、あんたには何度も世話にになったもの。俺たちを北海道に呼んでよ、門戸開いてよ。あ、そうだ、ホシノさんに見せたいモノがあるんだ、東京来ない?」

そこからはトントン拍子だった。
八朝師匠がどうしても僕に見せたいと言ってくれたのは、芸者衆の粋なお座敷芸として発祥、志ん朝師匠が生前懸命に保存しようとしていた女性芸人さんばかりでやる「木遣り」。志ん朝師匠の意思を継ぐ形で、永六輔さんのサポートによって旗揚げとあい成った「大江戸小粋組」公演だった。

八朝師匠のご手配によって、発売、即完売となった3月29日の国立演芸場の席に僕は座っていた。司会進行は「しゃべるめくり」として永六輔さん。凄かった。ふるえた。かっこ良かった。芸人衆も、永さんも。

それから7ヶ月強。
11月9日に「大江戸小粋組」の第二回公演が、さらに11月14日には、八朝師匠の落語会に永六輔さんがゲスト出演すると聞いてまた胸が騒いだ。
かつての「六八九トリオ」(作詞家・永六輔、作曲家・中村八大、歌手・坂本九)をもじって「ひさびさの六八コンビ!」という謳い文句だ。いてもたってもいられなく、僕は再び東京へ。

実は、僕は少年時代から、永六輔に魅了され続けているのだった。

(以下、次号)koiki.jpg

草原の人になる2

ある朝早く、草原の家のおばあちゃん(バイさんのお母さん)が作ったモンゴルの衣装を借りて撮影。「休め」の姿勢で馬に乗っているのがバイさんです。

文章を書いたり、広告を企画したり、北海道に於ける撮影(CMや映画やドラマ等)のコーディネイトが生業の僕ですが、来夏あたり、密かにモンゴルの旅をコーディネイトできないかなあ、と考えたのが今回の旅の発端なのです。だから、そのときのために、こんな写真を撮った訳。で、旅のタイトル or イメージコピーが「草原の人になる」。いかがでしょう?20050919042934.jpg

草原の人になる。

旅先で誕生日を迎えた。
内モンゴルの首府、フフホトにて。
横浜人の僕は二十歳と三十歳の誕生日を北海道で迎えた。で、今僕は小樽の住民になって13年になる。ただ今回の誕生日は四十歳でも五十歳でもないその間の中途半端なアニバーサリーなので、近々のうちにモンゴル人になってしまうことはないと思う。

内モンゴルは中国の中にある。外モンゴルがモンゴル国で、内モンゴルは中国内の自治区である。フフホトは6世紀に築かれた南モンゴルの古都のひとつで、モンゴル語で「青い城」を意味する。人口70万人の大きな町だが、漢民族が大多数を占めており、モンゴル人の比率は1割にも満たない。あとは回部族(イスラム)のエリアがほんの少しだけ。町の新旧の顔は、貧富と直結しているようだ。華やかな中心街は銀座や新宿並みだが、日陰のような貧しい旧市街は町のにおいからして違う。

そのフフホトから約四時間。
アルデレス原生草原はバイさんのふるさと。バイさんとは僕と同じ1959年生まれのモンゴル人。ただ違うのは文化人類学を学ぶため、8年前に札幌大学に留学してきた学究の徒であることだ。北海道大学の大学院も含め、すべての予定を終了して、この7月でフフホトに帰った。
その彼を頼って、彼の生まれた草原を訪ねた、という訳。

360度の地平線。そこには電気がない。水道がない。便所がない。
横浜から北海道の広さに惹かれて移り住んだこの僕が、「広い」という概念を根底から覆された。北海道の星の多さ近さに打たれたこの僕が、草原の星の輝きに言葉を失った。
風力発電と井戸と草原の厠。これで十分だった。至れり尽くせりでないと満足できない人は、所謂「観光草原」に行くがいい。
羊と馬を放牧させながら移動する遊牧民の生活には、トイレという概念はもともと存在しないのだ。

果てしない地平線まで続く、牧草の緑、緑、緑。
の、はずが、今年は46年ぶりの干ばつ、すなわち僕とバイさんが生まれた年以来の干ばつで、あろうことか、緑が見当たらない!sogen1.jpg

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