FC2ブログ

2010-01

土日のもっきりバル。

チリコンカン

23日土曜日。
午後三時の開店直後に、年配の男性二人連れの来店をいただいた。テーブルに腰かけるや否や、赤ワインをボトルで。黒板の、本日の料理長のおすすめから、ワインに合いそうなバルメニューを選んでくださった。

「札幌で昼から、それも気兼ねせずに飲めるところはそうないんだ。僕ら年金生活者には、この安さも魅力だなあ。あんたいい店作ってくれたねえ」

壁際のお父さんはそういって喜んでくれた。
かつてスペインのバルを訪れたことがあり、気取らず、それでいてどこか小粋な感じが好きで惚れ込んでしまったという。
「あんたが本場のバルをちゃんと知っていることがこの店を見ればよく分かる」とお褒めをいただき、さらに、もっきりと合体させた造語が訴えんとしているところを察してくださり、そこをえらく気に入ってくれたらしい。

「『もっきりバル』って、コンセプトが凄い。センスがいいや。う~ん、いやあ、なんだか居れば居るほどこの店が好きになって来たぞ」

といって、70に手が届くかとお見受けしたその御仁と相棒の方は、たちどころに2本目も空けてしまった。と思ったら僕を眼で呼んだ。近づくと、「あのね、ホントはもう一軒行こうと思ってたんだ。でも、コンセプトはいいし、食べ物はうまいし、兄さんたちは気持ちがいいし、あまりにもこの店が気にいったんで、このまま二次会に突入することにしたから。3本目からは二次会だからね」
と、そう言った。そうしてまたしばらくすると、
「もう1本くれる? ここからは三次会ね」

16日土曜日に、北海道新聞の和田由美さんが書いてくださった記事が掲載された日に引き続き、二週続けてお一人でいらしてくださった女性とも意気投合していたお二人は、結局ワインをボトルで4本開け、でもとてもきれいな飲み方で、背筋をすっと伸ばし、しっかりした足取りで階段を下りて行った。滞在時間3時間強。

バル2

24日日曜日。
そのお二人と仲良く話していた件の女性が、お友達を二人つれて連日のご来店。その日は午後1時過ぎから中年のご夫婦が口開けで、もの凄い勢いでホッピーを飲んでくれていた。奥様は、レギュラーの倍もアルコール度の高い(約10度)弊店オリジナルの『海賊ホッピー』をいたく気に入ったようで、滞在4時間に7杯も!(最初にレギュラーの黒ホッピー、キンミヤ焼酎のロックも飲んでいるのに!)

「私たちは酒だけで結ばれている(笑)」と彼女が叫んだ相方のご主人はといえば、白ホッピーを8杯。テーブル席よりも、カウンター立ち飲みを選ぶお客さんばかりのその日、ご夫妻は次々とカウンターの一人客と親交を深めていた。

さて、来店三度目にして、お友達を連れて来てくださった件の女性が言った。「昨日の二人のおじいちゃんはワイン何本飲んだんだっけ? 4本ね。じゃ、あたしたちは何本飲めばいいの?」
やる気満々である。

カウンターの男性独り客と僕が、『酒場放浪記』の吉田類さんのことを話していたら、例のご夫婦の奥さんが、「ちょっと待って、今、吉田類って言った? マスター知ってんの? ぎゃあああああ」

僕がその吉田類さんと小樽で衝撃的に出逢い、ひと晩一緒に飲み続け、出逢ったその晩に、彼のホテルの部屋で彼から俳号を名付けられた話やら、翌月、雑誌サライにも掲載された、浅草の和食店むぎとろで毎月開かれる彼の句会『舟』の定例会に参加、二次会神谷バー、三次会のバー『浅草バーリィ』ではほぼサシで類さんと語り合い、僕の手土産、北の錦純米吟醸をバーテンの木村さんはじめ、店に居た人たち全員で利き酒したエピソードとか…そんな僕の自慢話を嬉しそうに聞きながら、

「あのね、吉田類は私の神なのね。その類さんとそんな? わあ嗚呼嗚呼。凄い。良かった。本当に良かった。この店に来られて…嗚呼、なんて幸せなんだろう。私の神様と一緒に飲んだなんて…類さんの番組でわたしたち、ホッピーもキンミヤ焼酎も知ったのね」

そんなご夫婦が同じカウンターの男性とようやく引き上げた頃、僕は件の女性三人のテーブルで、ワインボトルの消費を手伝っていた。だって、兄さん、兄さん、座って一緒に飲んだらいけないの? って聞いてくれたんだもん。その時すでに、彼女たちは赤ワイン4本、白ワイン1本を空けていた。

バル1

そこに! 三越のドライフルーツ屋さん、ピエールが現れた!
店全体の異様な盛り上がりに、仕事上がり素面のピエールは、一瞬だけ気おくれしたものの、持参してくれたお土産ドライフルーツを「これみなさんに」と! お皿に小分けしたそいつを各テーブル、カウンターのお客様に配って歩きながら、僕は叫んだ。

「みなさんに、三越でドライフルーツ屋さんをしているお客さんからプレゼントです! 彼の名は、ハジメ・ビエール・ヤハギ!」

その瞬間、店にいた僕らスタッフも含むすべての人間が一斉に立ち上がって割れんばかりの大きな拍手が! スタンディングオベーションってやつだ!!!

いつの間にかピエールはワイン女子のテーブルに招かれ、ご相伴の挙げ句、四人で次の店へと流れて行きました。女子四名の滞空時間はおよそ5時間? ワインは7本空になったのでした。

そうしてその夜もふけていきましたとさ。

スポンサーサイト



ハジメ・ピエール・ヤハギ

ラインナップ

最近わが『もっきりバル 風の色』のカウンターはにぎやかで、一人で尋ねてくれるお客さんの中に、迷わず立ち飲みを選んでくれる人が増えて来ていて嬉しい限りだ。開業一ヶ月にも満たないのに、はや、そうした常連客同士が仲良くなってくれていているのもまた冥利である。

その中にピエールやカトリーヌがいて、えっと、も一人はジャンセンじゃないし、なんて言ったっけ。ごめんなさい。

ピエールは、小西由稀さんのブログから僕のブログにたどり着いて、「もっきりバル」というコンセプト?にまず喜んでくれたという。「これだ、と思ったので昨日見て、今日来たよ。来てみたら、ねえ、いいよホントに、この店」。これが、来店1回目のピエールの最初のお言葉。以来、すでに何度もカウンターの人になってくれている。


ココナッツチップ

昨日、食品衛生責任者に生まれかわった僕は、もっきりバルに入る前に寄り道をした。三越百貨店の地下一階にある、ピエールの店に顔を出すためだ。以前、内装業の大手全国企業にいたピエールは、脱サラでドライフルーツ屋さんになった。三越に自分のスペースを持って三年弱、来月には別の百貨店にも出店するという。千歳空港の売店での取り扱いの話なんかもあり、上り調子なのだ。

いちじく

とあるきっかけで興味を持って以来、ドライフルーツそれ自体が美しいのに、見合った見せ方売り方がされていないことに着目。パッケージや分量の塩梅を工夫して、「OLがオフィスでコンピュータに向かって作業しながら、かたわらに置いてあって絵になる存在」をイメージしたという。

ピエール

可愛いワゴンに50もの色とりどりのドライフルーツが並べられている様は圧巻で、女子ならずとも、無粋なオジさんすら足を止めてしまうような力がある。産地や製法のコメントを聞きながら、随分たくさん試食させてもらった。もうこれだけで楽しくなってきた。いちじくだけでも4種類。ココナッツチップとグリーンマンゴーが特に気に入ってしまった。これに人気のトマトとリンゴ、キウイがひとつにパックされたセット、さらにアプリコットをお持ち帰りすることに。

いやあ、ハジメ・ピエール・ヤハギ、素敵です。
みなさんも、ぜひ。これからさらに、ブレークの予感です。
店でも出してみようかな。

食品衛生責任者。

IMG_7946.jpg

昨日、そんな人になるための講習会を受講し、晴れてそういう人になった。まさか、自分が飲食店の店主になったり、食品衛生の責任者になったりなんて、半世紀の人生の中でつい2ヶ月前までは思ってもみなかった。

尊敬する蕎麦打ち職人がわが店にやって来て、その人のテーブルに出向き、僕が注文を取る。心臓に悪い。ロケ業界の仲間たちが、嬉しそうにカウンターで立ち飲みしている。ありがたい。昨日まで知らなかった人たち、通りがかりの人、新聞記事を見てくれた人たちが、目の前で酒と酒肴を交わしながら、縁故のお客と仲良しになっていたりする。不思議だ。

思えば、18年前に横濱市民から北海道民(小樽市民)になったときも、広告屋から編集者はまだしも、コピーや企画の人から、さらにロケーションコーディネイターのワラジを履くようになったり、雑誌に文章を載せたり、唐突にCMに出演することになったり、その流れでナレーションの仕事をさせてもらったりと、自分でも直前まで思いもよらなかった展開が、少なくとも10年周期くらいでひゅっと風が吹いたようにやって来るのだ。むろん、その風はどこかで自分が吹かせているのかもしれないけれど。

四十では自分の雑誌を創刊した。
五十で飲食店を開いた。

獅子座亥年生まれのなせる技か…。

めぐり逢ったすべての人々に感謝。


瀬戸國勝さんと小西由稀さん。

デスコ1

1月16日土曜日は、和田由美さんの記事さまさまで、わが『もっきりバル 風の色』開店の午後三時から、明らかに縁故者ではないお客様が次々現れてくださった。

三時開店lは今回の店オープンの一連の中でも、最も冒険した部分のひとつ。平日昼間から背広の紳士がお銚子を傾けている神田の蕎麦屋とは違って、まだまだ札幌では、ランチのグラスビールですら眉をしかめる人が多い。そんな土地柄なので、もっきりバルとしては朝から開けたいのをぐっとこらえて、遠慮して午後三時なのだが、早い時間は予想通り大苦戦だった。

それが三時の瞬間から数組のお客様が続き、僕のいた午後六時までは途切れることのないばかりか、開業以来縁故者がほとんどだった当店で、後から聞けば午後9時近くまで、ほとんどが北海道新聞を読んで足を運んでくださったフリのお客様ばかりだったという。


そんなありがたい状況を尻目に、僕は一足早く店を抜け出した。
丸井今井で開催されている「加賀老舗展」協賛の『輪島 瀬戸國勝 漆展』の瀬戸さんに、ある人を引き合わせるために。

昨年末に『おいしい札幌出張』が全国発売されたばかりの、フードライター小西由稀さんと、僕はそれまでたった二度の面識しかなかった。一度目は、彼女が「dancyu」で組んでいるカメラマンの本田匡さんと僕が、とある飲食店取材の帰りにたたずんでいた道ばたで。二度目は、お友達と一緒に『もっきりバル 風の色』を訪ねてくださったとき。

デスコ2

僕は好きな人、素敵な人と、気になる人たちを引き合わせたくなる質で、ようやく三度目にお会いする小西さんを、瀬戸さんとお引き合わせすることに勝手に決めた。今回の滞在中、昼に夜に、小西さんの著書を携えて、おいしい店探しに東奔西走している瀬戸さんを知っていたからだ。食いしん坊の瀬戸さんに直接小西さんをご紹介したら喜んでもらえそうだし、食を盛る器を創る作家さんは、小西さんのような方には、これまた喜んでもらえそうに思ったから。

もっと本音を言えば、年に一度か二度とはいえ、日本を越え世界の街角においしいものを探し求める瀬戸さんを、今夜はどこへ連れて行こうかと頭を悩ませるストレスを、素敵な本の著者に、すこし分かち合ってもらいたかったのである(笑)。

デスコ3

僕の狙いは的中。参考書の著者の訪問を瀬戸ご夫妻がたいそう喜んでくれたばかりか、件の著書にも掲載されていない、別の抽き出しからの一件(中央区南4条西6丁目 晴れ晴れビル2F イタリアンダイニング『デスコ』)が選ばれ、ご夫妻に僕らふたりご相伴する展開となったのであった。


明日はその新刊書の発行記念パーティという小西さんの晴れ舞台の前夜であり、前の晩まで一日も途切れず新年会が続いていた、彼女の唯一のオフの晩を僕が埋めてしまった形になる。

かくして僕は、おいしい店のセレクトをすっかり小西さんに託して楽をさせてもらったばかりか、彼女の豊富な経験による、含蓄ある食材の話、道産ワイン産地の話、素敵な料理長のエピソードまで、食卓を彩る会話のほとんどまでを委ねた挙げ句、瀬戸夫妻に感謝までしてもらって、なんと素敵においしい夜を過ごせたことか!?


ホッピーの時代。

ホッピ

今朝(1月16日土曜日)の北海道新聞朝刊で、わが『もっきりバル 風の色』が紹介された。それも、僕が敬愛する北海道出版界の重鎮にして、エッセイストである和田由美さんの人気コラム『狸小路グラフィティ』だから感動だ。

同紙の掲載ページをひとつめくると、本業のロケ部門で、うちのオノッチがサポートしている韓国の若手映画監督が、北海道アイヌを題材に映画製作の準備を行っている記事も出ていた。同じ日の道新さんに、風の色の二人の顔写真が載ってしまった!!

昨年末には、弊社代表山野が、札幌の若手映像作家を指揮して釜山で映画ロケを行った様子がやはり写真入りで紹介されたし、さらに昨年の冬の終わりだったか、風の色の若頭佐々木がラインプロデューサーを務めた韓国若手監督の映画撮影の札幌ロケの模様が、これまた写真付きで掲載された。

この一年で風の色プロパー4名全員が北海道新聞に顔を出したことになる。そのことの是非はともかく、こうした時代に、人様にお伝えできるような課題、案件を抱えることができるのは幸せなことかもしれない。

時代と言えば、雑誌『DIME』(2009年12月15日号)の「2010年トレンド大予測特集」で、『ホッピービバレッジ社100周年で新安酒ブームがやってくる!』という記事が掲載されたという(以下、ヒッピービバレッジ配信メールから)。

 『ここ数年は「ホルモンヌ」と呼ばれるホルモン好き、焼肉好きのまさに「肉食女子」が増加しそんな彼女たちが、ホルモンと共にオーダーするのが、低アルコール志向、健康志向にぴったりのホッピー! 歴史好きの女性「歴女」ならぬ「ホッピー女(ジョ)」(ホピ女)も急増中!』

今週13日水曜日には、フジテレビの朝の人気情報番組「とくダネ!」で、ホッピーが最近女子に話題のドリンクとして紹介されていたし、翌14日の「空からみてみよう」というTV番組には、横浜野毛の「ホッピー仙人」の店舗とオーナー(仙人)が出演していたという。12月6日に仙人にご挨拶に行ったばかりだったのに…。

どうやら、長年愛し続けてきたホッピーが、遅ればせながら、というか、めぐりめぐってというか、時代とリンクし始めているらしい。

昨日は札幌の情報誌『オトン』に、わが『もっきりバル 風の色』のPRが掲載されたばかりだし、今朝の北海道新聞といい、幸先の良いスタートに、ほっと安堵のため息ひとつ。である。
(北海道新聞さんでは、20日水曜日の夕刊『情報らんど』でもご紹介いただけるそうで)。

そういえば、僕のこのブログを読んだという方が、昨晩来店してくださった。文面からのコンセプトに喜び、現物を見てさらにもの凄く手を叩いていただき、僕も逆に感動した。

分かってくれる人がいるって、こんなに嬉しいものだろうか!

ロゴ

瀬戸國勝さんと味百仙。

瀬戸味百仙

丸井今井百貨店の『輪島 瀬戸國勝 漆展』(「加賀老舗展」協賛)で来道している漆器作家の瀬戸國勝さんと奥様は、たいへんな食いしん坊である。個展で日本と世界を渡り歩いているので、横濱出身の僕に、僕が知らなかった、小さくて見過ごしていた、でも無茶苦茶うまい横濱の焼き鳥屋を教えてくれたりする。

天下のすし善はじめ、いくつかの札幌の寿司店や和食店が瀬戸さんの漆器を使っていたりする。

さて瀬戸さんは会期中、いかにおいしい体験が出来るかに多大なる労力を払っている。現地人の証言はもちろんのこと、昨年は和田由美さんの「酒場グラフィティ」、今年は小西由稀さんの新刊「おいしい札幌出張」をナビゲータにしているようだ。

僕は改めてふたつの参考書を眺めながら、1月12日晩の会食の場を、どちらの本にも掲載されており、なおかつ僕自身も取材したことのある店に決めて席を押さえた。長島さんの『味百仙』である。

初日の会場でのご挨拶、わがもっきりバルへのご来店、これで今回お二人に顔を合わせるのは3度目だ。約束の時間を少し遅れて『味百仙』ののれんをくぐる。奥の座敷にはすでに瀬戸夫妻が座っている。待たせてしまった。彼らの初めての店にお連れするだけで緊張しているのに、巨匠を待たせてしまった。冷や汗が出る。

長島さんに挨拶。ほんとに店始めたの? 場所は?
敬愛する料理人の質問に、これまた緊張がつのる。いつの間にか、自分はこの人たちの同業者になっていたのだ。どれほどレベルが違おうと、先方が歯牙にもかけずとも、同業は同業。恥ずかしい。

「この前はおまえさんのとこで、ずいぶん飲んでしまった(笑)」
「ペース早いんだもの。ホシノさんはすすめ上手だし(笑)」

お二人が先にやっていたビールで口を潤し、戦闘開始。
特製塩ウニ、身欠きニシンを味噌で、牡蛎のゴルゴンゾーラ風味、ししゃもオスメスに、生干しコマイ、逸品ポテトサラダ…北の錦の北斗随想に千歳鶴の北育ち。

瀬戸夫妻の顔が、みるみる笑みでいっぱいになる。
よっしゃ、合格だ。長島さん、ありがとう。心の中で叫ぶ。
よい店は、連れて来た客人を喜ばせることで、結果、こちらの顔を立ててくれる。ありがたい。

瀬戸さんのペースにつられて、僕もしこたま飲んでしまった。
僕らはほろ酔い+アルファ(千鳥足)くらいの塩梅で外に出る。

工芸論を語るまなざしとは打って変わって、瀬戸さんはとろんとした柔和な表情で、おととい同様両手で僕を抱擁した。この抱擁がけっこう大胆で、おととい同様照れくさく、でもなんだかとても嬉しかった。

「良かったら金曜あたり、逢えたらもう一度くらいどう?」
奥さんがそう言って、お二人は小雪まじりの中、ホテルへ向けタクシーに乗り込んだ。


瀬戸國勝さんともっきりバル。

瀬戸珈琲1

今年も丸井今井の加賀老舗展が始まった。
今年は1月9日土曜日から17日日曜日まで。

同時開催の『輪島 瀬戸國勝 漆展』の瀬戸さんとは、1988年大晦日の輪島で衝撃的にご縁をいただいた。だから、おつき合いはかれこれ21年を越える。

1996年の正月にこれまた衝撃的な再会をこの札幌丸井今井の加賀展で果たしたその年の暮れには、輪島に瀬戸さんを訪ね、さらにお隣の珠洲市へ。瀬戸さんの漆塗りの湯舟のある湯宿「さか本」で、1988年大晦日以来になる、天才料理人坂本さんの手打ちそばをいただいた。

http://www.asahi-net.or.jp/~na9s-skmt/


今年の加賀展初日の午後、店に入る前に一条館8階の美術工芸ギャラリーに瀬戸さんを訪ねた。近年、僕が会場を訪れると、会場内の応接セットに僕を座らせ、瀬戸さん自ら珈琲を落としてくださる。むろん、瀬戸作品のトレイと珈琲マグによって供されるのだが、今回は京都の老舗和菓子が興を添える。この珈琲は、驚くべき食通にして大の珈琲好きの瀬戸さんが日本一と断じる職人さんの手によるもの。瀬戸さんのお嬢さんは、京都でこの珈琲を提供するカフェを開いている。

http://blog.livedoor.jp/keisy1959/archives/51278066.html



昨年の会期最終日は、瀬戸夫妻と恒例の食事会の約束だったのだけれど、瀬戸御大がインフルエンザでダウン、食事どころか能登への帰還も遅らせざるを得なかった。

毎年口の肥えたご夫妻との食事の場所を決めるのは頭が痛い。
一週間の会期で6日通ったというほど『おでん 一平』は気に入ってもらったけれど、それから十数年、一平を凌駕するのは容易ではない。

瀬戸夫妻イン#2

1月10日日曜日、そんな瀬戸夫妻をわが『もっきりバル 風の色』にお迎えした。出逢って22年目、まさか自分が店主の立場でこの人たちを迎える日が来るなんて…

「じゃ、白ワインの良さそうなところを見つくろってもらって…」

瀬戸さん、すみません。ウチにはうんちくを語るワインはないんです。イタリアのただの白ワインとスペインのただの赤ワイン、それもがぶがぶ飲んでもらえる大衆ワインしか置いてません。

バルカウンタ

でも、そいつをタコのガーリック煮やアボカドのディップやパンと併せ、北の錦の樽酒に移ってからは、生コマイの卵の醤油漬けだのキャベツの浅漬けだのとやってもらったら、さすがは心から本場のバルを愛する瀬戸御大、僕の「もっきりバル」の意図するところを汲んでくださったようで、料理長のおまかせの小皿たちを楽しんでくれた。

シャンパ

僕にとって、バルを翻訳すると、限りなく江戸の蕎麦屋酒に近い。
特別な酒肴を供するのではなく、蕎麦の種物をちょいと出す。オカメ蕎麦があるからかまぼこ。鴨南蛮があるから鴨をあぶって…。ざる蕎麦には海苔。という風に。そいつでちょいと、きゅっとやる。

空間としても蕎麦屋は単に食事だけの場所にあらず、飲むだけの場にもあらず、江戸の頃には二階であやしげな秘め事もありやなしや。バルも蕎麦屋もそうした地域のコミュニティな存在だった。

瀬戸さんは、いい寿司屋ってバルなんだという。これもなるほど、とうなづいてしまう。奥さん曰く、瀬戸はある年スペインから帰国してしばらくは興奮してバルの話しかしなかった、と。そうなんだ。バルにはそういう力がある。

バル店内

バル人気にあやかって、あるいは奇をてらって「もっきりバル」とした訳ではない。札幌ではやっているバルは、僕にはスマート過ぎる。昨秋マドリードやバルセロナで満喫して、僕を日本に帰りたくなくさせたバルは、もっともっと大衆的で気軽なものだった。同じ気軽さで日本的なメニューも同時に楽しめる場所。そういう意味合いで“もっきり”と合体してもらった。

シャンパ店主

本場のバル、バール、あるいはカフェを知ってる人は、なんとなくわがもっきりバルを理解してくれそうな気がする。なんでもない酒と、それによく合う気の効いた小皿料理。地域の情報と人が交錯する銭湯みたいなコミュニティ。だから、居酒屋ではなく、酒場と呼びたい。“ 場 ”こそが重要だから。

瀬戸ご夫妻のように究極に舌が肥えていても、値段で店をはかるのではなく、うまいものはうまいと評価し、食べ物と飲み物の相性、そして値段のバランスさえ合点が行けば、どんなジャンルや階層の店でも足を運ぶような人たちに支持されたらわが意を得たり、というものだ。

おいしゅうて、やがてあずましき…

個展でお疲れの瀬戸さんが、次第に夢見心地になっていく。


【瀬戸さんとの一月】

2006年
http://kazenoiro.asablo.jp/blog/2006/01/10/206736
http://kazenoiro.asablo.jp/blog/2006/01/11/206860

2007年
http://kazenoiro.asablo.jp/blog/2007/01/16/1115316

2008年
http://blog.livedoor.jp/keisy1959/archives/51128219.html

ななくさ。

七草

大晦日から元旦にかけても息継ぎができなかった。

今日こそ ほっと ひといき

新春ご挨拶/もっきりバル「風の色』開業に寄せて。

マドリバル夕暮れ

マヨールバル1

2009年10月、25年ぶりのバルセロナで散々バルに詣でた。

ハモン2

スペインでは、学校や病院のない村にもバルが存在するという。

バルの朝

バルは単に呑み屋にあらず。朝食に立ち寄り、昼から一杯も良し、夕餉には仲間と集う。
地域コミュニティの基地だ。

マドリバル

ちょいと一杯の気軽さと、なんでもない一皿のとんでもない美味しさが僕をトリコにする。

ピンチョス3

あえて日本で同類の悦びを見出すなら、江戸の蕎麦屋酒に違いない。

まるます家

帰国後、蕎麦屋以外で蕎麦屋酒めいた小さな幸せに出逢えるのはどこか考えた。
赤羽『まるます家』? 月島『岸田屋』?

まるます家1

まるます家5

横須賀の大衆酒場『もーり』の壁には「朝九時から飲み会できます」と書いてある。朝っぱらからホッピーでよろしくやっている。ホッピーといえば、横濱野毛の『ホッピー仙人』はホッピー専門のショットバーだ。

カウンター

そんなこんなが一緒くたになった酒場はないものか。朝からは無理でも、早い時間からホッピーに煮込みも、ワインにタパスも同時にOK。立ち飲みもテーブルも小上がりも混在した店作り。

小上がり

美味く安くあずましい。…ない。ならば自分で創るしかないではないか。

にぎわい

映像製作者の発想・人脈で不思議空間創ってみました。合い言葉は『とりあえず、ホッピー』

ロゴ

2010年初春 店主・星野敬白


NEW ENTRY «  | BLOG TOP |  » OLD ENTRY

カレンダー

12 | 2010/01 | 02
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31 - - - - - -

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

月別アーカイブ

カテゴリー

プロフィール

azumashikikuni

天気予報


-天気予報コム- -FC2-

ブログ内検索

RSSフィード

リンク

このブログをリンクに追加する

FC2カウンター

FC2ブログランキング

FC2 Blog Ranking

全記事(数)表示

全タイトルを表示