FC2ブログ

2013-10

前略 古今亭 志ん馬 師匠 様。

前略 志ん馬 師匠 様。

志ん馬師匠a

僕が四半世紀以上お付き合いさせてもらっている噺家、古今亭八朝師匠。
重い持病を持つ師匠にいつも付き添っていた、
師匠の女将さんが二〇一〇年六月に急逝されたとき、
翌七月にまた僕の仕事でお二人は札幌に来る予定でした。

持病で酒を飲まない師匠の運転で、僕と女将さんが、
浅草や上野をはしごさせてもらって呑んだくれたりした。
ご夫妻とはそういう仲でした。

その女将さんのたっての願いで、二〇一〇年七月の仕事の際には、
合間を縫って三人で旭山動物園に行く約束になっていました。

そんな女将さんが突然亡くなって、僕は札幌の仕事延期の相談を持ちかけましたが、
八朝師匠は、弟弟子の貴方を伴って予定通り札幌に来てくれました。


前略 志ん馬 師匠 様。

貴方は女将さんのピンチヒッターとして、八朝師匠の付き人として、
そして、もう一人の真打ちとして、鮮やかに役割をまっとうされました。

女将さんが亡くなってひと月にも満たない八朝師匠に少しでも骨休めをしてもらいたくて、
僕は旭山動物園の代わりに、八朝師匠と貴方を連れて、定山渓に一泊しました。

貴方は、ほぼ僕と同じ年で、
酒好き女好きのかなり破天荒なお人柄でしたが、
昔の芸人さんにはこんな人がきっと多かったろう。
そう思わせるような存在感で、僕はすぐ大好きになりました。

その晩は女将さんの代わりに貴方とずいぶん酌み交わし、露天につかり、
破天荒さの狭間、八朝師匠が外した隙に見せた兄弟子への繊細な心遣いに、
僕はますます貴方を好きになりました。


前略 志ん馬師匠様。

志ん馬師匠b

実は今日は貴方の告別式でした。
一週間前に八朝師匠から訃報の連絡を受けたとき、
僕は膝ががくがくしました。声が震えました。

八朝師匠から訃報を受けたのは女将さんに続いて二度目でした。
あの夏、貴方は女将さんを亡くした八朝師匠を見事に支えたのに、
今度は貴方のせいで、またしても八朝師匠は、つらく切ない日々に埋没してしまう。

女将さんの際には通夜も告別式にも参列しましたが、
僕は先週も来週も上京しなければならぬ用事があって、
昨日今日、どうしても僕は貴方の葬儀に向うことが出来ませんでした。

ごめんなさい。本当にゴメンナサイ。

前略 志ん馬師匠様。

祝日、星の庵は通常おやすみなのですが、
こころが泡立つような感じがして家に居ることも出来ず、
いま店を開けています。でも普段はおやすみなので誰も来ません。

ごめんなさい。とりとめのない、意味の分からないことばかり書いて。
誰かに話しかけたくて、なぜか貴方自身に向って書いています。
身勝手ながら、聞いてくれそうな気がしたのかな。

定山渓で一緒に騒いで呑んだくれた翌朝、
貴方がこっそり東京の奥様に電話をしていたのを僕は知っています。
その女将さんにも、僕は以前浅草でお目にかかっていましたよね。

前略 志ん馬 師匠 様。

二ヶ月くらい前、八朝師匠に、
志ん馬さんとまたいろいろご一緒したい、とお願いしたばかりでした。
いくら身勝手で破天荒な芸人さんとはいえ、今回ばかりは度が過ぎやしませんか。

ごめんなさい。
すこしまいっています。

前略 志ん馬 師匠様。

貴方に献杯なんかしたくありません。

くそお、合掌。
スポンサーサイト



追悼 古今亭志ん馬師匠。

志ん馬1

昨晩、東京からの帰路、もう三十年近くお付き合いさせていただいている噺家、古今亭八朝師匠からの着信があった。今朝気づいて返信しようとしたところへ、ふたたび師匠から。

「星野さん、驚かないでよ」

この導入は、三年前に八朝師匠の女将さんが亡くなったときと同じだった。
だからすぐ、この後に訃報が続くことを直感した。訃報を受け止める側に気遣った八朝師匠流の言い方だった。

「あのさ。志ん馬が昨日死んじゃったんだ」

志ん馬2
志ん馬3

2010年の6月に八朝師匠の奥様が急逝された時、翌7月に僕が企画していた札幌の寄席は延期すべきだと思った。八朝師匠には重い持病があって、旅の際には薬の管理等々、女将さんが付き人として添われることが多かった。何よりこの時は、何度も師匠との仕事や酒席もご一緒している女将さんから、三件あった札幌の仕事の合間に、旭山動物園に行きたいというたっての希望があって、その約束を僕も楽しみにしていた。

それが叶わなくなり、いろいろな意味で延期すべきと思ったのだけれど、八朝師匠は弟弟子の志ん馬師匠を伴って予定通り札幌に来てくれた。

志ん馬4

女将さんが亡くなってひと月足らず、僕は仕事の合間に少しでも八朝師匠に息を抜いてもらいたくて、志ん馬師匠と三人で定山渓に一泊した。志ん馬師匠は茶目っ気たっぷり、昔ながらの芸人さんにはきっとこんな人が多かったに違いない、というムードに溢れた、酒好き女好きの愉快な人だった。一緒に旅館のメシを食い、酒を飲み、湯船に浸かったその晩も、きっちりとその片鱗を覗かせてくれたっけ! 一方で、兄弟子を想い、繊細に気遣いするもうひとつの顔も…。

志ん馬6

年齢もほぼ一緒で、だから僕は最初からファンになった。
それから何年も志ん馬師匠にはご無沙汰していて、僕は七月に八朝師匠にお目にかかった時も、今度はぜひ、志ん馬師匠にも!とお願いしたばかりだった。

八朝師匠ばかりか、大師匠、古今亭志ん朝さんにすら面倒をかけ、頭を下げさせたそのやんちゃぶりがもう見られない。声が聴けない。会いたい気持ち。だから、会いたい人には、万難を排してとにかく会わなくちゃ駄目なんだ。後悔先に立たず。

志ん馬5

ああ、口惜しい。ホントに口惜しい。

八朝師匠からの電話、僕は途中から声が震えてしまった。電話の向こうのその様子に導かれるように、それまで事実を淡々と報告してくれていた八朝師匠が、「オレの一番の腹心だったからな」とつぶやいた。

志ん馬師匠。口惜しいです。ごめんなさい。
合掌。

http://sankei.jp.msn.com/entertainments/news/131008/ent13100810430006-n1.htm

NEW ENTRY «  | BLOG TOP |  » OLD ENTRY

カレンダー

09 | 2013/10 | 11
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

月別アーカイブ

カテゴリー

プロフィール

azumashikikuni

天気予報


-天気予報コム- -FC2-

ブログ内検索

RSSフィード

リンク

このブログをリンクに追加する

FC2カウンター

FC2ブログランキング

FC2 Blog Ranking

全記事(数)表示

全タイトルを表示