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2021-04

櫻が呼び起こした記憶。

きおく


すっかり日が短くなった。
夜が明けるのも遅いから、なんだか損した気分だ。

私が大切に思っている人の中で、病院に行かない人がいる。
最近いろいろ調子が悪かったりするのだけれど、
どんなにすすめても、
なんだか理屈の通らないことばかり言い張って、
結局、絶対病院には行かない。
それは、私にとってちょっと悲しいことだ。

実は今日は、
私たちの仕事をいつも手伝ってもらっているある仲間の、
手術の日です。

病院嫌いがたまたま受けた、
「すこやか検診」で肺に影が見つかって、
以来いくつものお医者をかけ持ちして検査した結果、
がんが判明したのです。
早期発見で命に別状はないと言われてはいますが、
左の肺の半分を切除するそうです。

彼は絶対元気に帰ってくると確信していますが、
16年前に63歳で亡くなった私の父は直腸がんで、
早期発見で良かったとみんなで喜んでいたのも束の間、
手術で転移が発見されて、診断は一転、後3ヶ月です、と。

私は絶望的に父親とすれ違っており、
物心ついてから、
まともに口をきいたこともありませんでした。
結局、
命は残り3ヶ月と言われてから、父は3年間生きました。
人工肛門の苦しい毎日のルーティンワークとともに。

私は、
東京にアパート暮らししなくては体力的に持たないほど、
広告屋の仕事が多忙を極めていましたが、
できるだけ横浜に帰って病院に顔を出すようにしました。

父は想像以上に元気で、
案外このまま直っちゃうのかな?
とまで思うこともありました。
だからあの日、奇跡的に休みが取れたお盆に、
私はタイ行きのツアーを申し込んでいました。
アパートから、今まさに、
成田へ向かって出発!
と玄関で靴を履いていた終戦記念日の朝、
電話が鳴りました。
母からでした。

「お父さん、危篤よ」

危うく人非人になるところでした。
日本が一年で一番混雑するお盆に海外で訃報を聞いても、
おそらく私は帰ってくることもできなかったでしょう。

私が病院に駆けつけると、
親戚がたくさん集まっていた。
もう父はすでに意識不明だったけれど、
小康状態が続いていたので親戚たちは夕方には帰っていった。
看病疲れの母も家に返し、
その晩私はひとりで病室に泊まった。

深夜、急に父の呼吸が荒くなり、
慌てて当直のドクターと看護婦を呼ぶ。
人工呼吸も功を奏さず、ドラマでよく見る、
あの心臓に電気ショックを与える機械が運び込まれた。
でも、二人とも経験不足なのかでくのぼうなのか、
苦しそうに息をしている意識のない父の横で、
機械の扱いが分からず、取扱説明書を読み始めた。

こんなときに。

あまりの腹立たしさに、
とにかく思い切り殴ってやろうかと思った。

でも、ここは病室だ。
いま、父は死にかけている。
そんなことをしている場合ではない。

私はどうすることもできず、
おろおろと父の足をさすった。

やがて父は静かになった。




向こう見ずな無頼を気取って、
不摂生や病院嫌いを自慢げに標榜する、
ありきたりで幼稚で愚かな人間だった。私も。

でも、父が死の淵から遠ざかったように見え、
一度は退院した父と同じ病院に、
入れ替わるように、
今度は自分が過度のストレスで入院してから、
少しだけ考えが変わった。

人は、健康でないと、喧嘩することもできない。
人は、健康でないと、憎むことすらできない。

だから、
自分の身体を気遣うのことは、
決して照れくさいようなめんどくさいようなことではなく、
自分を大切に思ってくれている廻りの人たちへの、
ある種の優しさなんだと思うようになった。


だからHさん、

私のために、
素敵なご両親のために、

もっと身体を気遣って、
病院にも普通に足を運んでください。
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