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2021-04

小樽雪あかりの路~みのかさやの想ひ出3

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10年ほど前、ボクは広地さんの「みのかさや」を取材させてもらった。
当時、雑誌に連載していた「とはずがたり」という、飲食にまつわる道具を見開きいっぱいの大きな写真で紹介しながら、その道具のこと、使う人のこと、その店のこと、そこから自由に飛躍したボクの想いなどを綴った文章で構成したベージだった。

その時のページには、みのかさやの七輪と、広地さんの表情、広地さんが「モロモロ新路」と名付けた件の小路の写真が掲載された。

その回の文章を書くため、そして、先月の日記にも書いた輪島の漆器作家・瀬戸國勝さんとの再会を果たすために、ボクは能登半島に旅をした。能登一帯、とくに珠洲市は、七輪の原材料である珪藻土の埋蔵量が日本最大と聞いたからだ。

出来上がった雑誌を手渡しすると、広地さんはたいそう喜んで言った。
「そんなに七輪がすきだったら、どれか一個あげるよ。今度車で取りにおいで」
ボクは舞い上がった。取材がきっかけでお付き合いが深まる。それはこの仕事をしていて、至福の喜びである。

札幌を中心に全道へ出かける仕事をしている関係上、地元とはいえ、お膝元の小樽に飲みに出る機会はそう多くない。その後、なかなか「みのかさや」ののれんをくぐれずにいた。

しばらくして、「とはずがたり」を連載していた出版社から電話をもらった。

それは、広地 聴寿さんの訃報だった。

広地さんの身内の方から、ボクに伝えて欲しい、という連絡があった、という。
電話をもらったのは広地さんの通夜の日だった。僕はとるものもとりあえず参列した。

すべての通夜の次第の最後に、喪主が故人の経歴を述べる北海道特有の場面。その晩、その役を務められたのは、広地さんのご長男だった。
誕生から学歴、職歴の話があり、奥様とのなれそめがあり、店の話と続いた。
それからご長男は父親が七輪が好きだった話を披露してから、何かの文章を読み始めた。

「…今では焼肉屋が林立する小樽も、当初界隈には今はなき朝鮮焼肉の店が二軒あったきりというから、現存する小樽の焼肉屋では最も古い店となる。
最近でこそ炭火や七輪の存在が見直されつつある。が、日本の近代化と共にかえって割高で不便な道具として片隅に追いやられてしまったかつての庶民のカマド七輪が、この店では40年近くにわたって絶品の肉の享受に欠かせぬひと役を買ってきたのである」

しばらくして僕は仰天して目を見開いた。
それは僕が書いた「とはずがたり」みのかさやの巻。

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「栓の木のカウンターの各席に組み込まれた七輪のひとつを拝見すると、マルコシという刻印。丸越産業は石川県和倉、この七輪も能登の産だった。
主人の広地 聴寿さんは一貫してこのメーカーの七輪を使用しているが、質の良い七輪は珪藻土に厚みがあり、炭が長持ちするとのこと。毎日使用していると口が広がって火力が落ち、従って炭が余計に必要で、商売用には寿命となる。こちらでは一年が目安とか。
採掘した珪藻土のブロックから直接ノミで削り出され、あるいは一旦砕いてから圧縮して出来上がる朝顔型七輪。干物を焼く囲炉裏や、橙の焔の色がだぶり、七輪の故郷の話に花が咲いた。」

ご長男の話で通夜が終了した。
僕はご長男に挨拶した。
「あなただったのですね。父はあなたのこの文章を気に入っていて、よくこの記事とあなたの話をしていました。父が亡くなったので、あなたが来てくれたら父も喜ぶと思ったのですが、何せ連絡先がわからなかったので…」

動悸が激しくなった。
手足が震えて、目の奥の方が熱く渋い感じになった。


先日、独りで「モロモロ新路」を歩いた。
「みのかさや」「阿呆亭」「せっせっせ」のあたりは駐車場になっている。
昨日、第9回目の「小樽雪あかりの路」の閉幕に際して、「みのかさや」を、そして広地さんと奥さんの名コンビを思い出していた。

コンビ


『モロモロのの意味において人生の秋を感じられるムキは…』
あの不思議なマークと一緒に「みのかさや」のマッチ箱に記されていた、広地さんの名口上。この言葉にちなんで、広地さんは店の前の小路を “モロモロ新路”と(勝手に!)名付けていた。


みのかさやが使い古した七輪を
広地さんにいただかなかったことが
悔やまれてならない

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