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2021-04

モーツァルトの周辺。

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1988年の秋、ボクは国立音楽大学の学園長(当時)海老沢敏教授とサントリー制作部(当時)の福井欣也カメラマンのお供をして、オーストリア、チェコスロバキア、北イタリア等へ撮影の旅をした。その頃携わっていた「サントリー音楽文化展」シリーズの図録制作のためにである。毎年クラシックの作曲家を一人取り上げ、その作曲家の母国の研究団体等から、自筆譜面や手紙、遺品ならびに同時代の絵画などを借り受け、展覧会の形で彼の生涯を浮き彫りにしようという試みだった。作曲家の展覧会という企画自体が異色であったし、会場の赤坂サントリー美術館では、そうした展示品のほかに一日数回、作曲家ゆかりの小編成の楽曲が演奏され、ビデオやCDの鑑賞コーナーもある盛りだくさんメニューで、別名「生演奏のある展覧会」という10年間続いた催事だった。

ボクらの仕事は国内の権威に監修を依頼し、企画全体を組み立てるところから始まる。ときに国宝級の展示物を借り受ける海外交渉とその輸送から展示プランニング。会場で販売される図録やポスター、ポストカード、テレホンカード(もはや遺物か!)、それから告知CMなどの制作。イベントに関するパブリシティの媒体社への働きかけ。在日大使クラスも出席するオープニングセレモニーの制作進行。関連イベント(サントリーホールでの演奏会、シンポジウム)の企画制作。そして約二ヶ月間にわたる展覧会そのものの運営業務。母国から立ち会いに訪れるVIPたちのアテンド…と多岐にわたり、そのすべてに関わることはボクの能力の可能性と限界とを思い知らされたけれど、生涯忘れられぬ経験でもあった。

ヨーロッパ出張まで担当したのはその年だけだったけれど、89年の春に二ヶ月の会期が終了した翌日、ボクは激しく胃腸をやられており、恥ずかしながら入院してしまった。

当時50代後半の脂の乗り切った学者と写真家のお供は緊張に満ちていた。
なんせ海老澤センセイといったら、モーツァルト研究の総本山、ザルツブルグ国際モーツァルテウム財団が「この人物は!」とモーツァルト研究家として太鼓判を押した、全世界にたった20数名しかいない研究メンバーのうちのお一人である。また、福井カメラマンといったら、ボクのあこがれ、山口瞳さんらと旅をしながらその著作の写真を撮った方というだけで目がつぶれそうな思いなのに、登り詰めて「長(おさ)」になったセクションで、「生涯いちカメラマン」を標榜して、みずから降格して無冠の人になってしまったような骨っぽい男なのである。当時、まだボクは30歳手前、初海外出張…。展覧会場で販売し、会期終了後はサントリーさんの関連企業、TBSブリタニカから出版する分厚い図録一冊分の写真撮影隊のロケマネージャーの心臓は、2、3週間の間、バクバクだった。

あれから18年。
ひょんなことから、というか、そのときのご縁の長い延長線上で、国立出身の声楽家にして海老澤センセイのお弟子さん筋にあたる、国立北海道教育大学芸術科教授の塚田康弘先生とお会いする機会を得た。函館の七飯出身の塚田先生は、北海道にモーツァルトの芸術を広め、後進の育成の夢も併せ「北海道モーツァルト協会」を主催されている。この会の今後のさらなる進展に、ボクも微力ながらひと役買うお話が静かに進行しており、昨晩は札幌市内の和食の店でグラスを掲げた。

モーツァルトの数少ない肖像画の中でも最も有名な「ベローナのモーツァルト」は、ダッラローザの作品。その画家の師匠がチニャローリで、彼の作とされている肖像画を海老澤センセイは所蔵している。海老澤センセイの許しを得て、塚田先生は自分の企画するイベントの印刷物にこの肖像画を使用しているのだが、さらに先生の働きかけによって、先生の故郷のワインメーカー「はこだてわいん」がこの肖像画をラベルに用いたモーツァルトワインを販売しているというのを初めて知った。なんとこのワインは、その熟成期間中、毎日毎日モーツァルトの「アイネ・クライネ・ナハト・ムジク」を聴きながら眠っていたのだという。

昨晩はその希少なワインが飲める店ということで、和食ダイニングバー「忍月(しのぶつき)」(中央区南3西4 五番街ビル2F)にお邪魔したのでした(写真後方は店長兼料理長の永井信一さん)。

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