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2021-04

前略、母上殿4

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今回の僕の帰省は、母親を北海道の老人施設に入所させるために、横須賀の病院から連れ出して飛行機に乗せるためのものだ。

何日かの助走期間を設け、日々少しずつ、わずかでもショックを押さえるように母にこれからのことを話してゆくつもりだった。ところが11月8日に見舞いにいくと変わり果てた母の姿があった。一瞬僕は目を疑った。虚空に手をかざしながら、目はつぶったまま、意味不明の言葉をうわごとのように話し続ける。寝言ではない。医者や看護士は、本人は覚醒しているという。それは、全くの植物人間状態だった。

一週間前に、お手洗いで転倒していたところを発見された母は、それから数日後全く歩けなくなった。むろん、食事もお手洗いも自力では行えない状態である。整形外科の診察でレントゲンや、さらに MRIなどの検査を行ったが、僕が今回の7回目の帰省をする前までは、骨にも頭などにも何ら問題はないと聞かされていた。ところが、その後の検査で、母の恥骨にひびがはいっていた。

動けなくなると、お年寄りの場合、歩行困難になるという話はよく聞いたことがある。その上、そうした状態に陥ると、認知症の症状は、加速度的に進んでしまうことを目の当たりにした。このままでは、予定通りに飛行機に乗ることは延長せざるを得ないばかりか、グループホームという認知症を専門に扱ってくれる施設への入所さえ危ぶまれる。医療行為を恒常的に必要とする状態や、自分の身の回りのことをいっさいできない状態では、入所の条件を満たすことができないからだ。

さいわい、その後母は意識を取り戻し、自立歩行はできないものの、車椅子の世話になりながら、少しずつ元の生活を取り戻しつつあった。ただ、認知の症状は明らかに進み、つじつまの合わない話も増えてきた。

11月19日現在、母は僕のことを「宇宙人」と呼ぶ。

北海道にいるはずの息子が、毎日毎日ひょいと現れることが、母の頭の中ではあまりにも神出鬼没、混乱を招きながらも不思議なユーモラスな存在に映るらしい。母の病室に足を踏み入れ、眠っているようなので、起こさないように、音のしないように抜き足差し足。すると突然、目を閉じてはいるけれど目は覚めている気配がするので、
「起きてるの? 僕だよ、わかる?」
と尋ねると、
「わかるわよ、宇宙人でしょ? 計画通り」
「え? 計画って?」
「私が眠っていて、目が覚めた瞬間に、あなたがここにやって来ているように、密かに計画していたの」

なんだかよくわからない。


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