山頭火の夜3
気がつくと、その奥様と、畠中さんとも親交の深い奥様のお友達がバーに出現して、僕らはカウンターからテーブル席に移った。
奥さん曰く、
「昼間のカレーの人と飲んでる、っていうから誰かと思ったら…。でもね、あなたがお店に入ってきたとき、なんか、あたしたちと同じ匂いのする人だな、って思ったの」
そして、ご自分にぞっこんの旦那のことは、
「この人は味に絶対的な自信を持ってるし、いつもこうやって威張っているけどね、実は小心者なんですよ」
それを聞いた旦那は、
「うーん、こら、ホントのことを言うな! ぜんぜん気にしてないふりして、やっぱり自分の味をどう思っているかとか、とっても気にしてるしドキドキしてる。だから今日の昼間、あまり初めての客が頼まないトマトとレタスの味噌ラーメンをキミが注文したとき、自分で作りたくなったんだ」
畠中さんが奥さんにぞっこんな訳が、少しだけ分かったような気がした。夜が更けて、そろそろ散会ということになった。
別れ際に僕は畠中さんに聞いた。
「ラーメン食べてから帰ろうと思うんですけど、山頭火以外で旭川で食べていいラーメンを教えてください」
「そうか、分かった。一緒に行こう!」と畠中さん。
「ここはいいよ! 旭川だから醤油を食べる人が多いけど、僕は塩がいいね」

山頭火の創業者に未明に連れて行かれたのは、3・6街の小路にある、僕も何度か入ったことのある、ごくごく普通の町のラーメン屋さんだった。今晩のことをブログに書いていいかと尋ねながら、携帯電話のカメラを畠中さんに向けると、だったらこんなとこ撮ってよ、とそのラーメン屋さん「弁慶」の丸々太ったおばちゃんのほっぺたに顔を近づけて、キスをするような仕草をした。「仲良しなんだ」

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