マロニエの名残り。

ここ数日、わが事務所の表で「パキッ」と卓球の玉を地面に叩き付けたような、聞き慣れない音が聞こえる。
耳を澄まし目をやると、紅花栃ノ木の實が、自分の重さに耐えかねてアスファルトの地面に落下しているのだった。紅花栃ノ木の實は、そっけなく丸い、表面がざらざらとした薄緑色をしており、割れるとなかから甘栗のような可愛い実態が顔を出す。
風の色の事務所前の通りは、あの巴里のシャンゼリゼを彩るマロニエの仲間であるとされ、北海道では珍しい紅花栃ノ木の並木になっている。ゴ-ルデンウィークを過ぎ、櫻が散った頃には、紅色の花が連なりなかなかな景観である。この数日は事務所の真ん前の一本だけがやたらと實を落としていて、舗道も車道も、あたり一面を覆うようだ。
毎年初夏の開花を楽しみにしているし、花が終われば花弁が雪のように積もるのも目にしたし、秋にはこうして實を落とすのも知っていた。けれども、パキッという音につられて落下の瞬間をじっと見詰め、なんとなくその實を拾い集めてしまったのは、ここに事務所を構えて初めてのことだった。
今年の秋は、いつもよりも少しおだやかな心持ちなのだろうか。
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