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2021-04

十月の一平1

一平箸

札幌市の中央区南3条西3丁目、克美ビルにはおでんの名店が二軒ある。ビル二階には、先にも書いた「小春」。先日六十周年を祝ったばかり。創業からの女将は、87歳で元気に今日も店に出ている。

数年前に五階に越して来たのが「一平」。
12年ほど前に雑誌の取材でお邪魔して以来なにかとご縁のある、僕にとっての究極の店のひとつだ。究極の店だと僕が宣うということは、つまり、店の主人に惚れているということだ。

一平に出逢ったおかげで、おでんの底知れなさを知ることができた。主人の谷木紘士さんを知っていたおかげで、江戸の庖丁職人にそば庖丁を作ってもらうことができた。一平を紹介したおかげで、輪島の漆器作家とのご縁がより一層深まった。

昨日の午後七時前頃にふと、一平のカウンターにいる自分の映像が浮かんだ。その直前に起きた、あるきっかけがそうさせたとも言えるけれど、二時間後に僕は、谷木さんの目の前に独りで座っていた。


一平のカウンターに座ってまず、この春に東京亀戸の「吉實(よしさね)」の吉澤操さんを訪ねたことを店主に伝えた。かつて僕のそば庖丁を作ってくれた人である。つまり、そのくらい、一平にはご無沙汰していた。

一平の谷木さんは、この職人仲間をミサオちゃん、と名前で呼ぶ仲だ。お祭り野郎の谷木さんは、一見さんが担ぐことのできない浅草三社祭の神輿を、吉澤さんを窓口にもう長いこと担ぎ続けている。春先に一平を訪ねると、たいそう体力と気力を必要とする三社祭に備えて「今年も腕立てをはじめたよ」なんて言っているのを何度も聞いている。

最初に大根を頼むと、
「すげえんだよ、この大根が。ざまあみろって感じさ」
いきなり谷木節が炸裂した。

一平初心者の頃、うまいうまいを連発していた僕の帰りしな、

「おいしがって食べてくれてありがとうな、嬉しかったよ」

と言った、その谷木流の言い回しに僕はしびれた。だから昨晩もいきなりしびれてしまったのだが、しびれついでに言うと、「しびれる」という表現も谷木ボキャブラリーの代表的ひと言で、昨晩も「今日はさ、実はもっと凄いのがあるんだ。自分で仕込んでいてまいっちゃったよ。そんなんとは比べ物にならないね…しびれるぜ」。そんな用法である。

一平舞茸

大根の次に、隣のご夫婦に薦めていた舞茸を、僕の意向も確かめずに、そして僕の顔すら見ずに、僕の方にもそっと差し出してくれた。このような間合いにも僕は弱い。

「これだけの上物はめったにお目にかかれないね。それ全部、手で裂いたんだ。なかなかそんなきれいに裂けるもんじゃない。手間かかってんだから。手の皮向けちゃったぜ。置いておけば置くほど、出汁がしみ出してくるから」

おお、なんという香りと出汁の奥深さ!

今宵、ふたつめのしびれだ。

(携帯カメラのピントがうまく合わなくて…悪しからずです)

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