十月の一平2

「ざまあみろ」の大根の面取りで生じた半端を、刺身のつま状に切った奴に自家製ポン酢をつけただけのつまみ。一平では、そんな一品が滅法うまい。それだけで酒が飲める。
「もっと凄い」と言っていたのは、見たこともないようにぷっくり太ったボタン海老で、エビ味噌をベースに仕立てた谷木流ソースが、確かに自画自賛するだけのことはある超逸品だった。
お分かりのように、これらはどちらもおでんではない。谷木さんがかつてよく言っていた「別口」とは、常連のみぞ知る、おでん以外のネタのことである。一平の場合、おでんだけで充分驚愕の味覚に出逢えるのに、たたみかけるようにこの別口が至福へと誘う。 大根の“つま”は和の世界だけれど、ボタン海老に至ってはフレンチの香りすら感じさせる。

季節の入り口に突入した銀杏。注文後に出汁に投入する、食する時点で半熟の卵。こっちはどちらもおでんとして供される。もうこのあたりで僕は、完全にしびれっぱなしだ。
さて、締めに向かう。小鉢に盛りつけた上から熱いだし汁をかけると、ふぁ~っと茶色から鮮やかな緑色に変貌する、大好きな「わかめ」を所望すると、「仕入れてはあるけど、ちょっと季節的にきびしいから今日のはやめときな」と言われた。店主にそう言われちゃ仕方がない。

代わりに店主が選んでくれたのは、これも“ 走り”の落葉キノコだった。おでんの出汁仕立てと、おろしポン酢の二役で登場。まったりとあっさりの落葉の饗宴に、ぼくのしびれもピークに達したのだった。
(今回、写真がうまそうでなくてスミマセン。しびれていたので…)
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