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2021-04

10月の自由。

10.月の自由4
 
17日金曜日、峯山冨美さん(元小樽運河を守る会会長)にお逢いしたことで、20歳も若いけれど、同じ名前の自分の母親が気にかかり、昨日久しぶりに施設に足を運んだ。

要介護度4の認知症に、アルツハイマーの症状が加わってから、また進行が早まった気がする。精神科の先生からは、原因が分からず、治ることのない病気だから、これからはいかに進行をゆるやかにするかということに重点を置く治療を心がける、と伺ったばかりだ。

昨年11月末、新しい環境に不安を感じながらも、「大好きな海の見える新しい家」に住めることをたいそう喜んでいたのに、昨日は車いすに座ったまま、天井ばかりを向いていた。

何よりも、目の光に意思の力が全く感じられないのが切ない。

「海を見ないの?」

と話しかけても反応がないので、車椅子を押してリビングの窓辺に母を連れて行った。いろいろな言葉や、頭をそっと触って促してみるけれど、それでも母は虚空を見上げたままだった。

グループホーム「自由の丘」のリビングの大きな窓からは、小樽湾がよく見える。10月の夕暮れ。


母は読売書法展の審査に関わるクラスの書道家だった。
僕が北海道に移り住んでから、母の書をプロデュースする形で、何回か仕事をしたこともある。

母が半生を費やした書への関心や「字を書くこと」そのものが、母のこれからの生活の支えになり、元気の源にならないか…。そう考えて、最後に母が住んでいた横須賀のマンションから、随分たくさんの書道関係の書籍や、筆や硯、紙を始めとする書の道具、何より母の作品を、僕はこの施設に送っていた。

だが、意識のはっきりしていた昨年末から今年始めにかけては、書の話をされるのが不愉快だったようだし、そうこうしているうちに、今ではほとんど意思の疎通さえ出来ないようになってしまった。しかも、字を書くことはおろか、昨日初めて目撃したのだが、アルツハイマーの症状のひとつである筋肉の硬直が手に出はじめており、母は両手を胸の前で「お化け」のポーズのようにこわばらせていた。

昨日、自由の丘のスタッフの一人とそんな話をしていたのだが、その若い女性が、突然、「ホシノさ~ん、ねえ、字を書いてみませんかぁ」と母の耳元で大きく声を出して言った。

10月の自由手

その言葉にはなんの反応もなかったけれど、優しい所作とはいえ、彼女は半ば強引に母にボールペンを握らせると、その手は正しく「ペンを持つ状態」を形づくり、固まったままになった。

今度は、筆を握ってもらおう。



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