酉の市で思い出したこと2

何百年の酒蔵ひしめく灘などは別格として、歴史の浅い北海道の中でもっとも古い酒蔵のひとつが、創業百三十年を迎えた栗山町の小林酒造だ。
今から十三、四年前。
雑誌の仕事で小林酒造を取材した際、立ち会ってくれた四代目(当時、専務だったか…)が僕の文章を気に入ってくれた。お互い蕎麦打ちが趣味だったりで意気投合し、札幌で酒を呑んだりもした。
「いつか、蕎麦屋酒の出来る店を作ってください」
の僕の言葉を受けて、
「その時が来たら、ホシノさんの力を貸してよ」
そんなやりとりがあった。
何年か後、小林専務は四代目を継がれた。その若き四代目から五年前の春、店をやることになったよ、とお電話をいただいた。秋の開店を目指して、店名を考えるところからつき合ってくれ、と。僕は心躍った。
小林社長のリサーチの結果、北海道は日本最大の蕎麦産地にして、『北海道の蕎麦」は最高のブランドではあるが、北海道ではお江戸東京のように“蕎麦屋で一杯”の文化が根付いてはいない。だから、北の錦(小林家の酒のブランド名)の直営店は蕎麦屋ではなく、北海道の地鶏で北の錦をたしなむ店になった。
小林家の赤れんがや札幌軟石の明治大正昭和の蔵が連なる様は、栗山町を代表する風景として知られている。そいつが、一番蔵、二番蔵…そして六番蔵まで。その北の錦が札幌に第七番目の蔵(直営店)を開いた。地鶏には地酒を。
そうしたアイデアによって、店名は決まった。
『地の酒、地の酉(とり) まる田 七番蔵』
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