潮ノ湯へ。

約束は28日水曜日午後1時。
10分ほど前に、僕は自分の車で『木ッ葉職人』土門収(おさむ)さんを仕事場に迎えに行く。土門さんの家は、南樽市場にも近い勝納町にある。
そこから車で約20分、塩谷の毛利さんを訪ねるのだ。
土門さんの家の目と鼻の先に『モーリ時計店』はあったのだが、平成15年10月に閉めて、塩谷の長男の家に移り住んだ。
毎週日曜日の午後6時半になると、土門さんが時計屋さんに迎えに来て、二人連れ立って潮ノ湯へ通っていた。それが平成15年10月以来、ぷつりと途絶えた。
その後も三ヶ月に一度、毛利さんは80年以上通っている床屋にバスを乗り継いでやって来るものの、バスの時間があるので、土門さんと話すのはせいぜい10分とか2、30分程度なのだ。
だから今回は僕が土門さんを連れて毛利さんを訪ねた。
毛利さんは正月2日で92歳。
土門さんは3月7日で89歳。
毛利さんに逢った途端、土門さんのテンションが上がった。
普段以上に口が滑らかになり、口上は名調子になった。
8年前の取材の話から、潮の湯の話になり、平成15年10月以来、塩谷の内風呂ばかりで一度も銭湯に行ったことがないという。
さいわい毛利さんは足腰も確かなので、ちゃんと送って来ますからと奥様に了解をいただいて、毛利さんを連れ出すことになった。次第に毛利さんも浮き浮き顔になって来た。二人の90歳が、少年の顔に戻った。
スポンサーサイト
● COMMENT ●
トラックバック
http://azumashikikuni.blog16.fc2.com/tb.php/296-9a771bcf
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)