おくりびと
その先輩は、僕が東京を離れて16年以上、常に交流し続けてもらっていた、数少ない最も大切な人のひとりだ。4年前に父上を亡くされてから、母上のこころのご様子がかんばしくなく、それでなくてもハードな日常を過ごしている先輩は週末ごとに群馬に帰省しては、母上と向き合っておられた。
おととしの夏から、今度は、横須賀に残して来た僕の母が認知証を患い、鳴り物入りでその年の11月の終わりに小樽の施設に連れて来てからも、やれ転倒だ骨折だと、介護度は進む一方で心塞いでいる時、お互いの母親の容態を話したりしていた。
22日の日曜日、僕は小樽市内の母の施設を訪ねた。
一年半前には想像もできなかった母の姿。
ひとりっ子の僕のことすらもうほとんどわからないのだが、最近は食欲だけはあるらしい。
ただ、食事も歩行もお手洗いも、人の手を借りないとなにもできない。
今日、2月23日月曜日午後早く。
速報で、日本映画『おくりびと』がアカデミー賞の外国語映画部門賞を獲得したと知った。
それから数時間後、先輩から事務所に電話があった。
母上の訃報だった。
でもこれは報告で、この電話の本題ではないと、すぐ別の話題に切り替えた気丈な先輩が哀しかった。
先輩も昨日、群馬の病院の母上を見舞ったけれど、別段変わった様子はなかっという。
つい先日も、母上の看護についての相談を受けたばかりで、僕は言葉を失った。
後の話題が耳に入って来なかった。
夜、街角のテレビから、北海道最長寿111歳の方が老衰で亡くなったという報道が。
帰宅後のニュース番組では、どの局も『おくりびと』受賞の快挙を告げていた。その歓喜。
合掌。
そして、献杯。
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