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2021-04

25年目のウヰスキー3

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卒業後何年かして、旅行のメンバーであり、名古屋の放送局に就職して早々に「踊るディレクター」と異名をとったさとふこふじが僕の部屋に来ていた。

横濱人の僕としては、都内の大学に通うのに下宿という訳にもいかず、1時間45分の電車通学をしていたが、だんだんと地方出身の同級生たちのアパートに入り浸るようになっていった。仕事を初めて2、3年が経過した頃、想像を遥かに超える広告業界の厳しさ忙しさに横濱からの通勤すらきつく、学生時代からの下宿への憧れも相まって、西早稲田の学生街に安アパートを借りた。


築ン十年の木造。共同玄関。共同下駄箱。共同トイレ。天井からぶら下がる鎖の先にホーローの取っ手がついていて、そいつをひいて水を流す、あれだ。

六畳一間。むろん風呂はないけれど,等距離に三軒の銭湯があり、学生街の定食屋はよりどりみどり、安くてうまい。気持ちばかりの流し。風呂に入れないときは,この流しで髪の毛を洗うのだ。

未亡人の優しいおばあちゃんが大家さんで二階に住んでおり、どれだけ世話になったことか。昼なお暗い裸電球のみの廊下をミシミシいわせながら部屋に向かう。真鍮のこれが「鍵」ともいうべき錠前が泣かせた。

僕はこの部屋が好きで好きで、東京に雪が降ると嬉しくて窓を全開にして、会社をさぼって朝から雪見酒としゃれたこともある。


ある週末、そこに踊るディレクターが泊まりに来ていたのだ。
翌朝、後年マイちゃんパパと呼ばれるもうひとりの愛知県民メンバーに電話をかけた。

「こふじが来てるけど、来ない?」

しばしの沈黙のあと、受話器の向こうで異音が響いた。
マイちゃんパパが旅立ちの決意を表明する電気ひげ剃りを始動したのだった。数時間後、僕の安アパートに、もうひとり客人が増えた。

(写真はマイちゃんパパよこいのテイスティング)


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