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2021-04

わたしの箸とやげん堀。

箸袋

近年はマイ箸ブームとか言って、自分の箸を持ち歩く人が増えている。僕は二十年以上前から実践しているので、ブームに乗っている人のように言われるのは正直心外である。

これまで一番気に入っていたのは『花見箸』という名前の、真ん中からねじ式で二つに別れるようになった紫檀の箸だった。品の良い藍染めの巾着に納められていたのだけれど、1万2千円もした。そいつを都内の飲み屋でなくしてしまった。僕が箸の持ち歩きを始めた時分は、まだ携帯用の素敵な箸を探すのは容易ではなかった。それが昨今は巷に箸屋さんをずいぶん見かけるようになり、ブームとは恐ろしいものだと思う。

当時あまりにもその箸を気に入っていたので、まったく同じものを再度購入。だが学習能力のない僕は、またしても飲み屋で紛失してしまう。時を同じくして、身の回りに箸を持参する人が増えているのと、それを「マイ箸」なんて下品な言葉で呼んでいるのに気づいて箸を携行するのが嫌になってやめてしまった。


二〇〇七年の秋だったか、生前母が入院していた横須賀で素敵な黒檀の箸を見つけ、ひさびさに『マイ箸』を欲しくなった。より高度な職人技を要求されるという五角形のと悩んだ挙げ句に、僕の手に馴染んだ八角形のものを購入。都内の箸屋よりも何割も安かった。

その時同時にすだれの箸巻きと朱色の巾着式箸袋を買い求めた。
今度こそはと大事に大事に使っていたのだけれど、昨年晩秋に菊浦史と新宿で飲んでいてやってしまった。なくしたのは箸袋だけではあったが痛恨の極みだ。花見箸の時以来にその箸一式を気に入っていたんだもの。

それから随所で同じ箸袋を探したけれどどこにもなかった。
二月八日月曜日、東横イン浅草千束をチェックアウトして、しばし浅草寺界隈を歩いた。何軒か見て回った後、以前のほど心に響いた訳ではないけれど、仲見世の箸屋さんで箸袋を購入。寒桜の紋様が施してあった。


薬研掘

その足で新仲見世の「やげん掘」を覗いて驚いた。札幌のデパート催事でしかお目にかかったことのないやげん掘の寅さんが店頭にいたのである!

この人は百貨店の催事専門に日本中でやげん掘を商う旅をしているので、僕はその口上のあっぱれさも併せて心中ひそかに寅さんと呼んでいた。寅さんが東京に戻ると、寅屋では必ず騒動が起きるけれど、やげん掘の寅さんは僕を見るなり、「ねえ、10分か20分時間ある? あるなら浅草一美味しい珈琲ごちそうするよ」。もちろん僕はこうしたお誘いを断らない。

いつもまわりの人間に、僕の七味は星野オリジナルブレンドと自慢している。「辛味を強く、山椒と麻の実を多めにして…」というわがままに応えてくれていたのはこの寅さんである。

この何年か札幌で寅さんを見かけなくなり、店番のおばちゃんに同じリクエストをしても、寅さんブレンドの味と香りに到底及ばない。それがつまらなくて、実は箸同様、最近七味を持ち歩くのがめっきり少なくなっていた。かつては箸・七味・山椒を携帯の三種の神器と呼んでいた僕なのに…。でもそれらを携行しない時に限って、たまさか焼き鳥屋や鰻屋に出かける展開になり、口惜しい思いをして来たのだ。

寅さんブレンドは、やっぱり群を抜いている。
目の前で調合してもらったのを鼻先にかすめただけで、その違いは歴然だった。

寅さんに珈琲をごちそうになりながら、わずかの時間で、寅さんが酒を飲めるようになった経緯(いきさつ)やら、(やげん堀の)社長から、定年の際に現職に引き止めてもらった話やらを伺った。

来る三月の札幌東急が久々の登板というので、僕らはその時の再会を約束して珈琲屋の席を立った。



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