引退の日 ― 小林酒造 脇田杜氏1

最初に栗山の小林酒造に脇田征也杜氏を訪ねたのはかれこれ15、6年くらい前になるだろうか。

雑誌の取材で記念館の歴史的収蔵品のいくつを拝見し、お話を伺った。北海道の多くの蔵が南部杜氏を迎えて酒造りしている中、小林酒造の脇田さんは同社製造部の社員から杜氏になった、所謂“道産子杜氏”として、酒造りには役不足と言われ続けてきた北海道米を使って数多くの銘酒を醸して来た、北海道が全国に誇る名杜氏だ。

二年前からは顧問という立場で後進の育成に尽力して来たが、三月二十七日、最後の蔵案内と講演をもって引退されると聞いて、とるものもとりあえず蔵にお邪魔した。

たしか二回目の取材の時、脇田杜氏の案内、しかもマンツーマンの贅沢で蔵をめぐった。杜氏の解説は軽妙洒脱で、何分に一回かは笑いが起きる。肩の凝らない気楽さのうちに、蔵のこと、酒造りのことを学ぶことが出来る。

明治、大正、昭和の蔵は、それぞれ「一番蔵」「二番蔵」という風に呼ばれ、小林酒造には札幌軟石や赤煉瓦の蔵が六番蔵まで連なっている。

蔵見学の後、会議室に移って酒造り五十年をめぐる杜氏の話を聞く。
思えば脇田杜氏を取材させてもらったことがきっかけで、日本酒、とりわけ道産酒に目を開かせてもらったばかりでなく、小林酒造さんとの長きに渡るご縁をいただいた。
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