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2021-04

古今亭八朝師匠と女将さん3



翌朝、帰り荷物をガラガラ引きずって同じ斎場を訪れた。
小雨の中、告別式は粛々と続いた。出棺の前、喪主挨拶で初めて古今亭八朝師匠が参列者に向かって挨拶をなさった。

「6月3日、藤山直美さんの舞台を乃理子と一緒に観て、腹を抱えて二人笑いました。その後お客さんと一緒に会食しているときも、乃理子はとても楽しそうで、いつものように機嫌良くお酒をいただいておりました。

日が変わった4日の午前零時半頃、僕の運転で帰宅して、駐車場に車を置いて歩いて家に向かっているとき、後もうわずかというところで乃理子が僕にしなだれかかって来て、そのまま二人とも転んでしまいました。その時乃理子は『酔っちゃったぁ!』と言って、にこぉっと笑ったんです。…… それが最期でした」

女将さんが起き上がれないので、師匠が背負って家の中へ。女将さんの意識がなくなってしまったので慌てて救急車を呼んだけれど…。

「乃理子は生前、ぽっくり死にたいとよく冗談で話していました。もしも私がそんなことになったら、救急車を呼ぶのを10分だけ待ってと。10分待ってから救急車を呼んだら、それから来るのにまた10分。それで私は植物人間になったりせずに、ぽっくり逝けるから。お願いね。乃理子はその通り実現してしまいました。ある意味大した死に際だったと思います。ただし、私を残して…」

持病を持っている師匠をあらゆる意味で支えた女将さんだった。
薬の世話からスケジュール管理、仕事先では付き人やマネージャーの役割もこなしていたのが乃理子さんだった。

誰もがこの先の師匠のことを案じていた。
わずか四年と二ヶ月しか一緒にいられなかったお二人。
通夜の晩、僕が、いつも師匠の運転でハシゴさせてもらって、僕と女将さんが飲んだくれてましたよね、と言ったとき、師匠は、
「でもね、乃理子がいなかったら俺は飲みに行けなかったから」

まったくの下戸なのに、師匠は酒の席にいるのが大好きだった。
今まではただそう思っていた。でもそれは「乃理子さんと一緒にいる酒の席」というのが正しそうだ。きっと師匠は、乃理子さんが嬉しそうに酒を飲んでいるのを見ているだけで幸せな心持ちになれたんだ。そうに違いない。

師匠の喪主挨拶は、乃理子さんとの幸せな日々への感謝の言葉で締めくくられた。

合掌。



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