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2021-04

函館の赤ちょうちん。

赤ちょうちん

最初にこの店に来たのは大学二年、21の夏。
はじめて函館山の夜景を見たある晩、8月でもこんなに冷え込むんだとこごえた身体で飛び込んだ。以来31年が経過。

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その後、学友の藤井先生と生まれて初めてホヤときんきを食し、美味すぎると絶叫しながら生ビールを飲み続けたのはこの函館赤ちょうちんだったし、函館での年越しが恒例となった学生時代の数年間、大晦日の晩には決まって独りこの店のカウンターに腰掛けていた。

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今年で28年目というから、おそらく学生時代の後半になってオーナーが今の澤田夫妻に変わったのだと思う。焼き方の佐々木さんの口上、話術が天才的に面白く、何時間も飽きずに常連面するようになった。

佐々木さんが店を辞めて移った七飯の食堂や料理長として迎えられた駅前のハーバービューホテル(当時)の和食店にも訪ねて行った。現在では五稜郭で自分の店『雅』を構え、大繁盛させている。

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三十くらいの頃だったかとある金曜日、僕はビール会社のディナーショーの仕事で仙台のホテルに来ていた。広告屋時代のお話。東京に帰れないこともなかったがホテルを押さえている訳でもなく、これからどうしようか思案しながら、牛タンと麦とろで一杯やっていた。

そのとき、学生時分の貧乏旅行でいつも乗っていた“上野初の夜行列車♬”、急行八甲田が仙台に停車することをふと思い出した。午前1時半仙台を調べてそれまで飲み続け、半ば発作的に八甲田に飛び乗った。翌朝6時過ぎ、八甲田青森到着。確か連絡船が7時30分出航で、函館到着が午前11時20分だったと記憶している。青函が存在していたので昭和63年3月以前の話ということになる。

その土曜日を朝市はじめ函館で時間をつぶし、夕方久しぶりに赤ちょうちんに顔を出した。社長が「おやケイちゃん久しぶり、今回は仕事かい?」と威勢のいい声で迎えてくれる。僕は「うん、仕事で近くまで来たもんだから」と返す。「どこで仕事さ?」「仙台」「ぜんぜん近くないっしょや!」一堂爆笑。

思えばこのたったひと言を言いたいがためだけに夜汽車に乗った。それがどれだけ受けるだろうかとそれだけを楽しみに連絡船に乗った。

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(何も注文してないのにこんなに出て来た。社長の心遣い)

馬鹿みたいに忙しい毎日を送っていた当時、東京勤めの横濱市民なのに東京にアパートを借りなくては身体が持たなかった。携帯なんてない時代、深夜に帰宅するとアパートの留守番電話に、二代目の焼き方岩ちゃんからメッセージが入っていたりした。
「ケイちゃん、ご無沙汰だね。今度いつ来るの。待ってるよ」
身も心も疲れ果てた深夜帰宅。函館からの真夜中のメッセージに涙がこぼれた。函館赤ちょうちんとはそんな付き合いをして来た。

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(三代目焼き方、小野ちゃん)

日曜日、佐々木さんが赤ちょうちんを離れた最初の七飯の店に初めて顔を見に行った。佐々木さんは東京からの訪問者にたいそう喜んでくれてビールで乾杯した。気がつけば飛行機の時間に遅れそうだった。その日は事務所で午后6時から大きなイベントの大会議があった。遅れる訳には行かない。佐々木さんがタクシーを呼んでくれて飛び乗る。僕は焦って運ちゃんに言った。
「函館空港! ○○時の飛行機に遅れる訳にはいかないんです!」
運ちゃんは真顔でうなずき、無線で本部にこう呼びかけた。
「○○時に乗るホシノさんて人を乗せてる。空港に連絡入れて、飛行機待たせといてくれ!」

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(奥尻産のホヤとウニの和え物)

考えてみると、人生52年。横濱にも東京にも、まして札幌小樽にも、世界中のどこにも、31年通い続けている店なんてほかにない。


平成23年7月23日。日が変わるまで店にいたら社長が、1時に店を閉めたら寿司食べさせてやるから待ってろ、と。昔正月やその他にも、何度か社長夫妻に閉店後の函館をお供させてもらったっけ。

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小樽に移り住んでから、ロケ等で函館を訪れると可能な限りお客さんを赤ちょうちんへ連れて行った。社長はここぞとばかりに僕の顔を立てて凄いサービスをしてくれる。後からそれを感謝すると、
「当たり前っしょう。ケイちゃんがお客さん連れてウチに来てくれたんだ。ケイちゃんがお客の前で思いっ切りいい顔できるようにするの、当たり前っしょう! あんたと俺の付き合いでねえの」

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澤田社長の会心の笑顔を見ると、いつも僕は涙が出そうになる。
この一年とちょっと、ほんの少しだけ飲食業をかじってみて、気まぐれに現れる客に対して、何十年にも渡っていつも普通にそこにあり続けることがいかに凄いことなのか理解出来るようになった。

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(社長はいつも豪気に御馳走してくれる)

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(この日だってつまみから始まり半端なことはしない)

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(僕も小野ちゃんももたもたしてると怒られる)

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(朝から飲み続けているけど、嬉しい酒は不思議に酔っぱらわない)

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30年以上経っても、社長がいて奥さんがいて、今は小野ちゃんがいる。そのことに甘えて僕はまた安心して函館に足を運ぶ。

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飲まない奥さんの運転でホテルへ。
初めて部屋に入ったのは午前2時半をまわっていた。





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