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2021-04

雪まつりと崩落事故。


今年も、札幌雪まつりが終わった。

一昨年は、雪まつりと同時開催の「すすきの氷の祭典」に、
風の色の企画による氷像を出展したのだが、
(※ http://www.kazenoiro.co.jp/
 内の「TOPICS/バックナンバー5参照。
 観光客の人気投票で堂々第二位に輝いたのです!)
昨年・今年はついぞ足も運べなかった。


1996年2月10日、
18人の乗客を乗せた小樽行きのバスと、
(そのうち何人かは札幌雪まつりを目指していた)
1台の乗用車が海沿いのトンネルの崩落事故に巻き込まれた。
発破による巨大岩石の除去など、必死の救命作業もむなしく、
約一週間後、20名が遺体で収容された。


その「豊浜トンネル崩落事故」から10年。

豊浜トンネルとは、
札幌から西へ、小樽を抜け、余市を通り過ぎ、
積丹(しゃこたん)半島という、
道内で唯一の海中公園に指定された日本海の美しい海辺にある。

シャコタンブルーと表現される、めくるめく蒼い海。
海岸線は「ローソク岩」や「神威岩」など奇岩奇石に彩られ、
夏の海はウニの宝庫、
シーカヤックにダイビング、海釣りに渓流釣り、
冬場ならマグロが近海を回遊、だから夏のみならず冬も寿司は最高。
オオワシ、オジロワシ、トド、クジラ、アザラシのウオッチングも楽しめる。
ほんの3年前までは、積丹岳山頂にヘリで登ってダウンヒルスキー!
なんてシャレたことだってできた。

「北の国から」の倉本 聰さんも、東京を離れ、札幌にしばらく住んだ後、
もっと厳しい自然のもとへ、と、
積丹か富良野かを迷った挙げ句、富良野に終の住処を定めたという。
もしその時の選択が積丹であったなら、
「北の国」はまた全然違う物語になっていたのだろう。

なにしろ、積丹はそのくらい素敵な場所なのだ。
イノシシ年の獅子座生まれ、
猪突猛進そのままに、衝撃的、発作的に、
何の縁もゆかりもない小樽に移り住んだ横浜人の私にも、
ほんの一瞬、おそらく30秒くらい、
移住をためらうユラメキの時間があったと思う。
でも、その時脳裏をよぎったのは、
積丹半島の海沿いの道をバイクで飛ばしている自分の姿であり、
この究極の絶景を一時間圏内に生活できるという、当時の僕には、
にわかに現実とは信じがたい現実を手に入れられる悦楽だった。

そのシャコタンロードで悲劇が起こった。
もう小樽市民になって4年ほど経過していたので、
被害者に直接の知り合いこそいなかったが、
知人には、被害に会われた方の関係者もいた。

当たり前のことだし、
少々幼稚な言い方になってしまうけれど、
「美しい自然」は「厳しい自然」と表裏一体だ。
海が見渡せ、山が迫る丘の上、
一目惚れして住み始めた現在の住処には、
年に数回は、
家屋倒壊の危機感を煽られるほどの突風が吹きつける。
足腰が立たぬほどの筋肉痛や腱鞘炎を招くほどの雪かきを強いられる。

当初は思っていた。
東京横浜あたりからやって来て、
上っ面だけの自然を礼賛して住み着いた奴とだけは思われたくない。
海がきれいですね。雪は素敵ですね。
ふん。
脳天気にはしゃいでいるだけで生活が出来る訳がないだろ。
冬の厳しさも知らないで、都会もんが何言ってやがる。
そう陰口をたたかれるのは口惜しい。
僕が瞬間的に移住を宣言してしまった理由のひとつには、
売り言葉に買い言葉のように、
「じゃ、ひとつ、冬を立派に暮らしてみせましょう」と、
と粋がってみせた部分がまったくない、とは言いきれない。

しかし、10年前のこの崩落事故は、あらためて僕に突きつけた。
山が海にまで迫る絶景にため息をつく贅沢は、
死と隣り合わせの生活を引き受けることで成立しているのだと。
美しい雪の国に暮らすことは、
雪で死ぬ可能性を承諾していることとイコールなのだと。


ただ、この豊浜トンネル崩落事故の原因には、
自然の猛威だけでは片付けられないものがあったように思う。
そして、結果、責任の所在がどこにあろうとも、
人為的なものが計り知れぬほどに関係者を傷つけたことは許しがたい事実だ。
事故の以前から、「兆候」のようにあった小さな崩落など、
そのことに適切に対処していたら、悲劇は未然に防げたかもしれない、
という永遠に消すことの出来ない遺族の思い。
当時のあるやりとりの映像を、昨日テレビで放映していた。
この事故とはまったく別の、何かの事故や事件の際に見たような、
似たような場面が映し出される。

焼香に訪れた「管轄の役所」の人間に、
せめて故人の霊前に詫びてやってくれと遺族の方。
それに対する役人の言葉。
「賠償はするけれども、謝罪のことばは言ってはならない、
 と上から固く言われてますので」


これは、人間の言葉ですか?

絶句。



ただ、その日、雪まつりを楽しもうとしただけの、
そのとき、そのバスに、たまたま居合わせてしまっただけの、
二十の、いのち。

心からご冥福をお祈り申し上げます。keiho2.jpg

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