深紅のカウントダウン。

むかし足を運んだある音楽会のパンフレットにこんなコピーが書いてあった。
“シルクハットも 薔薇の花束も 役に立たないさ”
分かったような分からないような気障な言い回しに歯が浮きながらも、なんとなく気になるコピーだった。裏を返せば、シルクハットや薔薇の花束は、人生のある局面に於いてはかなり役に立つ小道具なのだろうと、脳みその片隅にメモした。
とはいえ、むろんシルクハットの持ち合わせはないし、購入してもそうそう使い途はなさそうなので、もっぱら薔薇の花束を活用させてもらった。でも多くは自己満足に過ぎず、僕や誰かの人生を劇的に変えたりはしなかった。
この花を最初に見た時は、生まれて初めて深紅の薔薇を目にした時の数倍衝撃を受けた。よくぞこんなに鮮烈な色彩を身につけて産まれて来たものだと恐れ入った。この花を駆使して誰かの人生を変えたことはないが、この花に出逢ってから、暮れに押し進むあのせわしなさはもっと切なく、でも、人知れず哀しげな華やかさを身につけた。
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