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2020-02

追悼のかなしみとおかしみについて。

追悼行灯

先日、僕を開店に遅刻させた映画『エリザベスタウン』(2005年/米)を検索したら、あまりにも酷評が多かった。その意味も分かる気がするけれど、僕はあえて名作とは言わないが、快作と信じている。

過酷過ぎる現実を真っ向から見すえて描くのに、ファンタジーやメルヘンの衣を着せた手法を選ぶのを僕は好きだけれど、日本人には受け入れられにくいのも知っている。〝現実としてあり得ない設定〟や〝常識を超えた展開〟を、〝軽薄でリアリティに乏しいレベルの低いもの〟として厳しく断罪するするタイプの人たちだ。

この作品に関して、そのように切り捨てる人ばかりなのは正直残念だ。

病気や入院を経験したことがない人間ほど、一見深刻ではない病に冒された人の見えない苦しみを見落として、優しく接することが出来ないのにどこか似ている。

犬を飼ったことがない人が、愛犬を見送った人が親兄弟を失ったのと同じ悲しみに暮れているのを、いつまでも何を大袈裟なと吐き捨てるのにも似ている。そんな気がする。

悲しみが深過ぎるからこそ、笑いに転嫁(昇華?)するしかないぎりぎりの表現を僕はこの作品に感じた。物語の、起きる事件の設定を、漫画的にすることでしか救えない、掬い上げられない逆説的な真実を感じた。

救いようのない仕事上の大失態を演じた主人公が、自ら命を絶とうとしているところへ、さらに追い討ちをかけるように実父の訃報が舞い込んで来る。家族から遠く離れた自らの故郷で逝った父親の葬儀に参列するために、父の遺志であった、火葬して海に散骨して欲しいという願いを叶えるために、どん底の長男は父親の故郷を目指す。

そこで出逢った父親を愛した故郷の人たちと、旅の途中にめぐり逢ったひとりの女性との交流、そして、これまで垣間みたこともなかった母親の父に対する想い、それら様々なエピソードが重なり合い連なって、父の遺骨を抱いて自分の町へ帰る旅であるラストへと向かって行く。

実体験を自ら脚本化した監督(「ヴァニラ・スカイ」のキャメロン・クロウ)のこの作品を、多くの人が感情移入過多のウェット過ぎる作品であり演出であると酷評していた。
でも、僕はしきりに想い出していた。

追悼母の書

認知症を患い、いきなり横須賀の精神科からひとり息子の住む北海道小樽の施設に移送され、世話をしてくれる施設の人以外、誰ひとりとして自分を知る人の居ない土地で急逝、荼毘に付された母。その母を「手荷物」として飛行機に乗り、四十九日に父の眠る神奈川県の霊園に納骨するまでの一週間、友人にも親戚にもホテルの部屋にも母を放置出来ずに、毎日抱きかかえたまま、人に会い、仕事をこなし、酒を飲み、歌を歌った日々を。

そんな体験だって人様からすれば滑稽に映っただろう。なにを愚かなことを、親の死を遊ぶのか。もっと正しく適切な方法があったはず。故人を冒涜していないか。そんな風に感じる人が多かったと思う。でも僕は大真面目だった。考え抜いたけれど、そうするしか方法を思いつかなかった。


納骨の前日、三浦海岸の霊園に近い三崎の港に宿をとった。
夕刻、その宿に首都圏に住む、母と交流のあった僕の友人たちが七、八人集まってくれた。僕はようやく荷物を解いて、古びた旅館の宴会場の床の間に母を坐らせた。床の間の祭壇に収まった母に、連中は献杯し、宴に興じてくれた。

納骨当日は親族の時間であろうからと、前日の旅館の夜を、大真面目に非公式の弔いの場へと昇華させてくれた奴らに見合う感謝の言葉を僕は持ち得ない。僕がこの映画にとてつもなく惹かれるのは、あの日三崎の旅館で経験した、哀しみと至福が同時に在る不思議な瞬間を想い出させてくれたからだと思う。

【参考Blog】
http://d.hatena.ne.jp/mike-cat/20051201
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