金曜の君。
星の庵のお客様の中でもとりわけ “粋” を解する方だとお慕い申し上げている。
金曜日に着付けの会があるとかで、お仲間と夕食をとったその後にふらりとお一人でおみえになる。
何度目かにいらしたとき、着こなしが素敵なのでそれを伝え、僕も和服が大好きですとお話ししたら、その次に訪ねてくださった時に、
「主人は着なくなったから」
と丹前や長襦袢、兵児帯までも含めた藍の着物と浴衣をくださった。モンゴルの話が弾んだことがあって、その次にはモンゴルの酒器を譲ってくだっさった。

ここで口にした炭仕込みの桐箱でいただく焼き海苔を気に入って、父の実家である、渋谷区広尾は星野園の海苔を十帖も買ってくださった。
最後にいらしたのは小樽からようやく雪がなくなった頃と記憶しているので、おそらく七、八ヶ月ぶりだろう。扉が開いて黒いショールと薄紫の着物が目に飛び込んできた。
八月の小樽堺町 浴衣風鈴まつりのコンテストで優勝したことを報告したりしているうちに話が弾んだ。
母親の料理や漬け物の味を次の世代に伝えることについて。冬至にかぼちゃを食べ、柚子湯に入る等の日本の習慣、歳時記について。
今のお嫁さんや若い人はそういうことに興味がないよね。これじゃおふくろの味や日本の習慣は途絶えちゃう、と。そんな日本の歳時記の話から、酒器の話題へ。

写真の漆器をお見せして、その作家であり、二十六年にわたる不思議なご縁の輪島の瀬戸國勝さんが、毎年一月の札幌の百貨店、丸井今井恒例「加賀老舗展」と同時開催で長年個展を開いていることをお伝えした。
金曜の君は「加賀老舗展」には欠かさず足を運んでいらっしゃるということで、今度の正月には金曜の君と瀬戸さんが札幌で顔をあわせることになるかもしれない。
星の庵訪問にたいそう時間が空いたのは、身体の塩梅があちこちよろしくなかったからだそうで、とりわけ心臓に問題があるのだという。
大事にしてくださいね!
僕は思わず声が大きくなった。
この人が大好きなのだ。
「今日はいいものを見せてもらったわ。今度来るときは私の漬けた漬け物を分けてあげる。それとさっき話した、それは素晴らしい櫻の絵が表裏に描いてある、京都のぐい飲みも見せてあげるね」
ありがとうございます。
でもそれより僕はこの人の心臓が気にかかった。
「母も姉も心臓が悪くて、二人とも同じ六十七歳で心臓で亡くなったの。だからずっと気に病んできた。六十七歳が怖かった。でも、私は二人の年を超えたからもう大丈夫」
嵐山新地の裏小路に出ながら振り返りつつそう言って、金曜の君は今宵の満月みたいににっこりと微笑んだ。
金曜日に着付けの会があるとかで、お仲間と夕食をとったその後にふらりとお一人でおみえになる。
何度目かにいらしたとき、着こなしが素敵なのでそれを伝え、僕も和服が大好きですとお話ししたら、その次に訪ねてくださった時に、
「主人は着なくなったから」
と丹前や長襦袢、兵児帯までも含めた藍の着物と浴衣をくださった。モンゴルの話が弾んだことがあって、その次にはモンゴルの酒器を譲ってくだっさった。

ここで口にした炭仕込みの桐箱でいただく焼き海苔を気に入って、父の実家である、渋谷区広尾は星野園の海苔を十帖も買ってくださった。
最後にいらしたのは小樽からようやく雪がなくなった頃と記憶しているので、おそらく七、八ヶ月ぶりだろう。扉が開いて黒いショールと薄紫の着物が目に飛び込んできた。
八月の小樽堺町 浴衣風鈴まつりのコンテストで優勝したことを報告したりしているうちに話が弾んだ。
母親の料理や漬け物の味を次の世代に伝えることについて。冬至にかぼちゃを食べ、柚子湯に入る等の日本の習慣、歳時記について。
今のお嫁さんや若い人はそういうことに興味がないよね。これじゃおふくろの味や日本の習慣は途絶えちゃう、と。そんな日本の歳時記の話から、酒器の話題へ。

写真の漆器をお見せして、その作家であり、二十六年にわたる不思議なご縁の輪島の瀬戸國勝さんが、毎年一月の札幌の百貨店、丸井今井恒例「加賀老舗展」と同時開催で長年個展を開いていることをお伝えした。
金曜の君は「加賀老舗展」には欠かさず足を運んでいらっしゃるということで、今度の正月には金曜の君と瀬戸さんが札幌で顔をあわせることになるかもしれない。
星の庵訪問にたいそう時間が空いたのは、身体の塩梅があちこちよろしくなかったからだそうで、とりわけ心臓に問題があるのだという。
大事にしてくださいね!
僕は思わず声が大きくなった。
この人が大好きなのだ。
「今日はいいものを見せてもらったわ。今度来るときは私の漬けた漬け物を分けてあげる。それとさっき話した、それは素晴らしい櫻の絵が表裏に描いてある、京都のぐい飲みも見せてあげるね」
ありがとうございます。
でもそれより僕はこの人の心臓が気にかかった。
「母も姉も心臓が悪くて、二人とも同じ六十七歳で心臓で亡くなったの。だからずっと気に病んできた。六十七歳が怖かった。でも、私は二人の年を超えたからもう大丈夫」
嵐山新地の裏小路に出ながら振り返りつつそう言って、金曜の君は今宵の満月みたいににっこりと微笑んだ。
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