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2020-02

リンダの夜。


その人は昨晩突然現れて、
一本の薔薇を差し出し、
「これ、ピエールに」と言った。

リンダ1

小樽 嵐山新地『星の庵 風の色』の前身、札幌 狸小路『もっきりバル 風の色』の立ち飲みカウンターの王様だったピエールこと故 矢萩 肇は、その後現れたカウンターの独り客に次々と店でしか通じないフランス名前を命名した。

カトリーヌしかり、セバスチャンしかり。

先月、風の色のその後を知らず、めったに訪れることない小樽にたまたま飲みに来ていたセバスチャンと、花園銀座商店街でばったりと偶然の再会を果たした。その時、セバの苗字を初めて知った。

「これ、ピエールに」

昨晩突然現れて、一輪の薔薇を差し出しながら開口一番そういった彼女は、「もっきりバル 風の色」に何度となく訪れ、ピエールと交流していたことが続く会話で判明した。

自分よりもずっと年下のピエールが自分の話を優しく聞いてくれたので、私はピエールが大好きだった、と。

もっきりバルの店主だったホシノが、小樽でふたたび風の色をやっていることを最近突き止めたので、ホシノなら何かしらその空間にピエールの痕跡を残しているに違いないと確信して、ピエールの話がしたくて札幌からやってきたのだという。

この女性は、狸小路のピエールのカウンターの仲間入りがしたくて、みずからリンダと名乗ったらしい。

リンダ2

リンダは、大江戸セット等いくつかの星の庵の品書きを日本酒中心に楽しんでくれた。少し前からやっていた星の庵の常連さんに、自分が注文した風呂でいただく湯豆腐をおすそ分けしたりと、すぐに新生風の色に馴染んでくれたようだった。

座った席の背後の額にピエールの遺影が収まっていることを知ると、奴に向かって杯を掲げる仕草をしていた。

そうしてしばらくして、独り言みたいに言った。
「やっぱり星野さん…思った通りだった」

今日のためにリンダは小樽にホテルをとってあるからと、終電に乗るために慌てて店を出た常連さんを尻目に、ゆったりと星の庵の時間を楽しんでいるようだった。

「今日の最後に、ピエールの思い出に」

そう言ってリンダは、奴の好きだった白ワインと奴の商っていたマルシェ・ド・ピエール(究極のドライフルーツ!)を注文した。

「今日は来て良かった。
 ピエールにも逢えたし。
 また来るね」

そう言って日付も変わる頃、美味しいウイスキーが飲みたいという彼女は、僕が教えたご近所の正統派バーに向かった。

ピエールによる命名ではなく、自ら付けたリンダという名前はフランス名ではないと思うけど、いまだにリンダが何さんなのか、風の色の店主は知らずにいる。
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