独酌 三四郎の夜。

旭川ロケ4日目の夜、
全スタッフとの夕食後、またしても誰とも合流せずに、
お気に入りのシブイ飲み屋ののれんをくぐった。
昭和21年創業というから、今年還暦を迎える店だ。
http://www11.ocn.ne.jp/~dk-sansi/
創業以来使い続けている大きなかまどが異彩を放つ、
古びた時間を感じさせる店内。
黙っているとおっかなそうだけれど、
実はなかなかに話好きな二代目店主。
ちゃきちゃきと気っぷの良い、日本酒通の女将。
カウンターと小上がり、二階にも座敷がある。
でもここでは、店名にある「独酌」が似合う、
カウンター席がお勧めだ。
その時カウンターには、僕と、
それぞれ一人で来ている中年の男女の3名がいた。
左端に私、中央に女性、入口横の右端に男性という構図だった。
客3人とお店の3人がなんとなく相互乗り入れで会話をしており、
お女将の妹さんである仲居さんと僕の誕生日が一緒だったりで、
小さな盛り上がりを見せていたときだ。
入口の扉が開いて大柄な男性が入って来た。
それを見て女性が激しく反応した。
「あらやだ、●●だ! ちょっとあんた、なんでこんなところにいるのよ」
その人は誰もが知っている芸能人で、僕もすぐに彼だと分かった。
世に出て来たときは警官ネタが得意な一人コメディアン。
その後、ソウルを本格的に唄うシンガーに転身して世間を騒がせたが、
最近は役者としていい味出している。
「僕、○○さんにこちらを紹介されてきました!」
「ええ、ええ、聞いてますよ」と女将。
最近はともかく、初期からシンガーの頃にかけての印象に反して、
極めて折り目正しく、腰が低く常識的な好印象だった。
非常識なのはカウンターの女子。
近隣の都市でのライブか何かを終えてやってきたという●●さんは、
誰がどう考えても、一人静かな憩いの時間を求めて、
誰かにこの店を紹介してもらって訪れた訳だ。
「独酌」ってくらいだから、この店はどんぴしゃなのですよ。
僕ら3人もそれぞれ独りでカウンターに止まっていたぐらいですから。
そんな想像力のかけらも持ち合わせていないらしい彼女は、
矢継ぎ早に、しかもデリカシーのかけらもない馴れ馴れしい言葉と態度で、
ずかずかと土足の攻撃を開始したのでした。
あくまで“柳に風”の大人の対応をしていた●●さんですが、
笑顔で冗談めかしつつも、
「いやあ、まいったなあアサヒカワ。あなたみたいな人がいるとは」
と本音もちらとのぞかせていました。
「ホントに来てよかった! 素敵なお店でした。ありがとうございました」
滞在時間、およそ15分。
潔い風のような素早さで、
僕の中の好感度をめちゃめちゃアップして、
厳寒の夜の通りに戻って行きました。
それにしてもあの女!
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