はれるや!

ずうっとしたいと思っていて、ながいことできずにいたこと。
クロスカントリースキーは先月ようやく手に入れて、
下駄履きのように自宅から装着して目前の風景の中で楽しんでいる。
もうひとつしそびれていたのは、
「はれるや」ののれんをくぐることだった。
大衆食堂に惹かれるのは、銭湯が好きなことや、
そば屋酒に首ったけなことと根底でつながっている。
それは、
限りなく日常に近いところを徘徊する、
あるいは日常と非日常の狭間をゆく、
小さな小さな旅だということだ。
遠くに行かなくても、自分の町でもいい。
大勢よりはひとりで、
表通りよりも裏路地を歩く。

「はれるや」には小樽に越して来て以来、
思い続けながら、なぜか入る機会を逸していた。
看板とのれんのインパクトが凄過ぎる。
「はれるや」という店名が食堂を超越している。
これはもう、味に期待する次元とは異なっている。
初めての「はれるや」には、厨房のおばあちゃんと、
二人の客がいた。
サラリーマン風が定食にありついて、
食べ終わり、お勘定して出てゆくまで、
店のばあちゃんと、お客のおばちゃんは、
一刻も休まず話し続けていた。
客のおばちゃんは常連らしく、
食べ終わったのか、これからなのか、
とにかく会話が途切れる間がない。
店の作りと品書き、値段体系は、
僕がうっすらと勝手に定義している、
愛すべき「大衆食堂」そのものだ。
じっくり悩んだ挙げ句に注文したメンチカレーが、
僕の目の前に出された頃までには、
常連らしきばあちゃんがさらに二人増えていた。
(つづく)

スポンサーサイト
● COMMENT ●
トラックバック
http://azumashikikuni.blog16.fc2.com/tb.php/79-b1726885
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)