はれるや2

(「はれるや!」からの続き)
二人目のばあちゃんが扉をあけた時、
店のばあちゃんは、
「あーら、どこのお嬢さんかと思ったら!」
と喚声とも言うべき大声で迎え入れた。
杖をついた二人目のばあちゃんは80代半ばくらいだろうか。
注文する様子もなく、
おもむろに「今、市場で買った」という、
紅白の饅頭を手提げ袋から取り出し、
店のばあちゃんに手渡した。
ばあちゃんはそいつをいくつかに切り分けると、
僕の横に座った最後に入って来たばあちゃんにも手渡す。
「いやいや、あたしご飯食べて来たから!」
食堂の会話とは思えない。
「○◯さんと市場でばったり会っちゃったから、
きっとあたしもここへ来るだろうって話してると思って、
来ないと心配するだろうから、食事終わったばかりなのに来たよ」
彼女たちは毎日ここへ来ているのだろう。
必ずしも売り上げに協力している訳でもないらしい。
そんなことを僕が尋ねると、
「そう、いつでも話し相手がいることがね、
私たち年寄りには一番大事なの。
ここに来たら、必ず誰かお友達がいるからねえ、
たまり場みたいなところなのよ、ここは」
と口々にそういった意味のことを話してくれた。

「はれるや」はばあちゃんの代になって27年経つという。
その前に3年やっていた人がいて、
創業者は10年間営業していた。
だから、ばあちゃんで三代目。
つまり、この名前で40年営業していることになる。
「この店を始めた人はクリスチャンだったんだって。
だからヘブライ語で神様を讃える、
ハレルヤという名前を付けたらしいの。
私がこの店を引き継いだ時、あんたはクリスチャンじゃないんだから、
名前を変えるべきだって人がいたけど、
せっかく永く続いて来たんだから、ねえ」
絵に描いたような大衆食堂の、その店の看板ばあちゃんから、
ヘブライ語なんてコトバを聞こうとは思ってもみなかったけれど、
まさに、これぞ小さな旅の醍醐味。
再び訪れるべき場所がまた増えてしまった。
仕事の途中でなければ、コップ酒で乾杯!
と行きたかったよなあ…。
♪ ハーレッルッヤッ!

(※「独り言」.mac版では、もっとたくさんの写真をご覧になれます。
http://web.mac.com/keisy/iWeb/kazenoiro-tsuushin/
また、ずっと休んでいた私個人のホームページ『鬱蒼庵日記」
http://www.ne.jp/asahi/star/field/
の「駅前食堂」コーナーに近々「はれるや」を登場させる予定です。
乞う、ご期待!)
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