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2021-04

わたしの蕎麦包丁4

おとうと清


そんなこんなの経緯があった(「わたしの蕎麦包丁1~3」参照)おかげで、一年越し、感動のあつらえ蕎麦包丁の引き渡しから間もなく、当時の私の雇い主であったヘンシューチョー、その友人のコピーライター氏、そして、そのまた友人だった包丁職人・吉澤 操さんと一杯やる機会に恵まれた。1997年の春だったと思う。

その晩に連れて行ってもらった、すすきのでも大函店に属するその和食屋では、何人もの板さんが吉澤さんの包丁を使っているという。
普通の感覚では、作った側からみて、使ってくれている側が所謂「お得意様」である訳なのだが、このときの印象は逆だった。
事前に「吉澤来訪」が伝えられていたらしいその店に僕らが入店する際、板さんたちがずらりと整列してお出迎え、吉澤さんに最敬礼したのだ。
「いつも使わせていただいております!」
吉澤さん自身は「ども」って感じで、もちろん威張った風でもなく、とりたててへりくだった様子でもなく、つまりは自然体のまま奥へ。
でも僕だけは、今回の「神をも怖れぬ」自分の所業に対し、赤面する思いを新たにしながら、行列の最後尾にいたのだった。

その夜の最後の店で、僕は巨匠と歌など一緒に唄っていたように思う。喜びと緊張と好奇心で、僕はけっこう酔っぱらってしまっていたのではなかったっけ。


毎年2月の雪まつりと6月の北海道神宮祭の前後、札幌の百貨店の江戸老舗物産展に登場する吉澤さん。僕もその後は、毎回吉澤さんに会いに行った。その際には、蕎麦包丁を里帰りさせて研いでもらった。
ただ、2年前に右手指を骨折して以来、ちょうど同じ頃ばたばたと忙しくしていたこともあって、七夕的再会がすれ違いになっていた。しかも、気がつけば、百貨店の催し自体のスケジュールが以前と変わっていた。6月の催事がなくなり、2月の催事が3月に変更になっていたことをようやく把握したのは、去る1月に輪島の漆器作家の瀬戸 國勝さんと、吉澤さんの仲良しである、おでんの一平の谷木さんのところにお邪魔した時だ。
実に男っぽい、料理人である谷木さん。人生一回りの年配の職人仲間たち。強面の吉澤さんのことを、これもゴツくて繊細な谷木さんが「ミサオちゃん」と名前で呼ぶのを聞いていると、なんだかその仲良し加減が素敵でうらやましい。


久々の吉澤さんとの再会を思い描いて、僕が今年の江戸老舗にぎわい展を訪れたのは、最終日の前日3月7日の夕方だった。
そこには吉澤 操さんの代わりに、僕も一度お逢いしたことのある弟の清さんがいた。

「兄貴はね、明日から大分なんで、さっき東京に帰っちゃったんだ。で、俺がピンチヒッターで来たって訳」

いやあ、吉澤 操、相変わらず忙しいんだなあ。
蕎麦包丁に加えて、柳刃(刺身包丁)と菜ッ切りが増えていた、吉實ファミリー3本セットを抱えて、銃刀法違反で捕まりはしないかとびくびく小樽から訪れたのだったのだが…。
蕎麦包丁は時間と道具の関係で研ぐのはむずかしい、ということで、残りの2本を翌日までの預かりで清さんにお願いした。
清さんは、兄・操さんとはまた違うタイプの職人さんで、ちょいと遊び人風の軽やかさが親しみやすい。

「今日はさ、もう仕事する気なくなっちゃったからさ、うん、明日昼までに間違いなく仕上げておくから」

清さんがここに来たののは、今日の昼からでしたよね(笑)。

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